論文紹介
08 JANUARY 2023
Simple Method for Evaluating Lung Dose Optimization in Patients with Lung Cancer Treated with IMRT
肺癌に対する強度変調放射線治療が急速に普及する中で、治療計画作成方法には定まったやり方がありません。手探りでベストと思われる治療計画を作成し治療を行ってきましたが、症例数が増えたところでデータを振り返り、治療計画の達成度を評価する手法を編み出しました。題名に「Simple」と入れたくらい簡単な方法なので、これから初めようとする施設の役にも立つと思います。
Thoracic Cancer
doi:10.1111/1759-7714.14634
28 DECEMBER 2022
Radiotherapy With H2O2 Gauze for Preauricular Sebaceous Carcinoma
超高齢者の眼瞼外脂腺癌に対して過酸化水素水ガーゼを使って放射線治療をおこなった症例報告です。眼瞼外脂腺癌に対する放射線治療の報告はこれまでほとんどありません。超高齢の患者さんにも負担ない放射線増感法として過酸化水素水ガーゼを併用し、非常に良い結果を得ることができました。本症例報告は今後同様の治療をおこなう場合の貴重な一例となると思います。
Cureus
doi: 10.7759/cureus.27464
17 DECEMBER 2022
Carbon-Ion Radiotherapy for Soft Tissue Sarcoma of the Extremities
四肢の骨軟部組織腫瘍に対する重粒子線治療の成績をまとめました。四肢の肉腫に対する基本的な治療方針は手術ですが、合併症で手術ができなかったり、その侵襲から手術を希望されないケースがしばしばあります。その場合、治療方法は非常に限られていました。これまで悪性骨軟部組織腫瘍に対する重粒子線治療の有用性が示されてきましたが、四肢の病変に対する報告はわずかです。当院では骨軟部腫瘍外科とも協力し、四肢の病変に対しても重粒子線治療を行ってきました。他の部位の骨軟部組織腫瘍の治療と同様に良好な治療効果を示し、有害事象も許容範囲であり、根治治療の有用な選択肢となりそうです。
Anticancer Research
doi: 10.21873/anticanres.15859
06 DECEMBER 2022
Risk of Secondary Malignancy after Radiotherapy for Breast Cancer: Long-Term Follow-Up of Japanese Patients with Breast Cancer
時間が経って初めて大事なことが見えてくることがあります。また、良い面だけでなく、リスクについても明らかにすることは、医療の質をさらに向上させる上で必要不可欠な要素です。この研究は、日本人の乳がん患者さんにおける術後・放射線治療後の2次がんのリスクに関して、700人以上・最長18年余りのデータを元に解析しました。最先端の治療や研究手法だけではなく、このような地道な研究も未来を拓くためには重要と考えています。
Breast Cancer Research and Treatment
doi: 10.1007/s10549-022-06644-x.
25 NOVEMBER 2022
FGFR Axis: A Seed for Cancer Radio-Sensitization
過去の私達の臨床研究によってがんにおけるFGFR経路亢進が放射線抵抗性に寄与することが示唆されました(2021/5/6記事参照)。そこで本研究ではFGFR阻害剤LY2874455の放射線増感効果を調査しました。同薬剤は複数の放射線抵抗性がん細胞において増感効果を示し、マウスモデルにおいても明らかな毒性は認められませんでした。Narisa先生はインドネシア出身の当科リーディング大学院です。院生生活の総まとめとなる4報目の筆頭論文、おめでとうございます!
Cells
doi: 10.3390/cells11111727
14 NOVEMBER 2022
Inoperable Post-Irradiation Osteosarcoma Treated with Carbon-Ion Radiotherapy
放射線治療では、放射線治療を行うことで誘発される二次癌というのがしばしば問題になります。この論文では子宮頸癌に放射線治療を行い長期間経過した後に照射野内に発生した骨肉腫に対して重粒子線治療を行い、長期生存を得られた2例を報告しました。放射線治療後の二次癌への再度の放射線治療は難しいと思われがちですが、重粒子なら安全に根治的治療ができるかもしれません。症例報告ではありますが、みなさまの診療の役に立てれば嬉しいです。(編者注:柴先生は湘南鎌倉総合
病院でご活躍中で、写真は近郊の新江ノ島水族館だそうです)
Radiation Oncology
doi: 10.1186/s13014-022-02040-3.
03 NOVEMBER 2022
Get Good at Aiming!
「学位論文がAcceptされた」 人生に1度しかないその瞬間の喜びは、つい昨日のように鮮明に思い出すことができます。本研究では、通常の腔内照射のみでは治しきることが困難な巨大・不整形の子宮頸癌に対して、組織内針の刺入を追加するハイブリッド照射という技術を習得するためのシミュレーターを開発しました。放射線治療医が腫瘍を上手に「狙い撃ち」できるようになることで、世界中でより多くの子宮頸癌患者さんが助かるようにと想いを込めて作った自信作です。
Journal of Clinical Medicine
doi:10.3390/jcm11113103
23 OCTOBER 2022
Repeated C-ion RT and TACE for Hepatocellular Carcinoma: A Case Report
高齢患者の初発大径肝細胞癌に対して重粒子線治療を行い、局所再発に対してTACE+再照射、他部位再発に対してTACEを繰り返し行い、良好な経過が得られた症例報告です。元はある先輩から引き継いだ学会発表でしたが、ようやく論文にすることができました。ご指導くださった先生方、ありがとうございました。
Clinical Journal of Gastroenterology
doi: 10.1007/s12328-022-01642-4
08 OCTOBER 2022
First Human Cell Experiments With FLASH Carbon Ions
私と吉田先生、尾池先生による共同筆頭著者の論文です。近年、超高線量率(FLASH)照射が注目を集めています。従来同等の腫瘍制御や正常組織障害低減のメカニズムは議論の真最中です。一方、炭素線FLASH効果についてはほとんどデータがありません。もともと炭素線ではスポット単位で高線量率ビームが得られています。そこで、単一スポットビームに対してFLASH/non-FLASH炭素線照射システムを構築し、ヒト細胞について効果を調べました。その世界初の報告です。今回FLASH効果は見られませんでしたが、今後条件を広げて調べていく予定です。
Anticancer Research
doi:10.21873/anticanres.15725
01 OCTOBER 2022
JASTRO Consensus Guidelines of IC/IS Brachytherapy. Now Available!
子宮頸癌に対する組織内照射併用腔内照射(いわゆるハイブリッド)の元祖と言えば、群馬大学です。その有用性は高く評価され、アジアの放射線治療医が群馬大学に研修に来るなど国内外でも次第に広がりつつあります。しかし、これまで腔内照射のみ実施してきた施設にとっては、なかなか一歩目が踏み出せないのではないかと思います。このガイドラインは、国内のエキスパートが安全に高度な治療を行うための議論を重ねて完成しました。この治療を必要とする世界の人々に読んで頂き、さらに発展させていきたいと思います。
Journal of Radiation Research
doi:10.1093/jrr/rrac011.