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当教室の研究概要

私たちは日本有数の医会員数を誇る腫瘍放射線学教室として、がん放射線治療の向上を目指して熱意をもって研究に取り組んでいます。研究領域は、臨床腫瘍放射線学、放射線生物学、医学物理学、医療経済学、AI、さらには非がん疾患への放射線医学の応用など多岐に渡ります。

とくに、日本で最初の「重粒子線治療施設を有する大学」として、重粒子線治療の高度化・最適化・普及のための研究に力を入れています。放射線治療以外のがん治療医はもちろんのこと、医学物理士、生物学研究者、放射線技師、看護師、粒子線エンジニアなど多彩な専門家が協力し、さらには国内外の研究機関や企業とも協働することで、学問領域の枠を超えて俯瞰的に研究を推進しています。

当教室が世界一流の研究者と情報が行き交う革新的医療の研究開発拠点として発展を続けるよう、今後も努力していきます。


放射線治療は、がん治療の重要な柱のひとつです。放射線治療でがんを治すために事前に我々が知りたいことは、
  • 1)どの範囲にどのような線量分割で照射すればがんを制御できるか
  • 2)その際、周囲の健常臓器への影響はどの程度になるか
  • 3)将来がんが転移するリスクはどの程度か、そのリスクにどう対処すべきか

という点に集約されます。

1)では放射線生物学に加えて、腫瘍進展を正確に把握するために画像診断学や病理学などの領域の研究も重要です。2)では動物実験や実臨床から得た知見を基にして、中等度〜高度の有害事象を避けることを目指します。3)については局所療法である放射線治療単独では限界があるため、化学療法の併用などによる集学的治療が必要です。

近年、放射線治療テクノロジーの進歩は目覚ましく、画像情報に基づきピンポイントに狙う様々な高精度X線照射法、さらには炭素イオン線などの粒子線治療が百花繚乱のごとく現れ、標的のがんに対してより強く、周囲の健常臓器にはより優しい照射が可能となりました。つまり、上述の1)と2)がバランスよく進歩しました。しかし、依然としてX線抵抗性腫瘍が存在することや、標的周囲に一定の線量投与が避けられず有害事象をきたすことが課題となっています。また上述の3)については、症例の生物学的情報に基づき最適な分子標的薬や免疫療法を併用する治療戦略の個別化を推進する必要があります。

当教室では臨床、生物、物理など多岐に渡る研究をおこなっています。

〈臨床〉

  • 様々ながん種における重粒子線治療の有効性・安全性の検証
  • 画像誘導小線源治療の高精度化のための研究
  • 免疫放射線治療の有効性に関する研究
  • 放射線治療の医療経済評価

〈生物〉

  • X線抵抗性予期因子の同定のための遺伝子解析
  • 重粒子線の殺細胞効果の分子機序の解析
  • 放射線により誘導される抗腫瘍免疫反応の分子機序の解析

〈物理〉

  • カーボンナイフの開発
  • 3次元CdTeコンプトン量子カメラによる重粒子線の線量評価法の開発
  • 重粒子線治療における線質(LET)プロファイルの解析
  • 画像誘導4次元重粒子線照射法の開発

教室員の多くが、自らが主導する研究に対して国から科学研究費助成を受けています。
大野達也 皮膚、肺、腸管に対する炭素イオン線FLASH効果のLET依存性に関する検討
河村英将 AIによる重粒子線治療後QOL予測を利用した意思決定支援システムの構築
岡本雅彦 膵癌に対する重粒子線治療の時間的・空間的最適化に関する研究
渋谷圭 重粒子線による代償性肝肥大を利用した肝腫瘍に対する新たな集学的治療法の開発
岡野奈緒子 心不全に対する炭素イオン線治療に関する基礎的研究
武者篤 頭頚部放射線治療時の口腔粘膜炎発症予測情報の共有による新規介入方法の検討
安藤謙 膵癌の炭素イオン治療反応性に関連する遺伝子変異のゲノム網羅的探索
尾池貴洋 超解像顕微鏡をもちいた重粒子線クラスター損傷の修復動態予測アルゴリズム開発
安達彰子 腫瘍微小環境における重粒子線によるDNA損傷の解析
熊澤琢也 子宮頸部腺癌臨床検体における重粒子線治療後の免疫チェックポイント分子の発現と機構
宮坂勇平 子宮頸部腺癌に対する放射線治療における免疫関連分子と予後の評価
吉田由香里 脳における炭素線FLASH効果の検証と機序の解明
酒井真理 コンプトンカメラ線量計の粒子線BNCTへの応用

当教室では国際多施設共同試験を含め、数多くの臨床試験をおこなっています。

〈多施設前向き研究〉

  • 頸部食道癌に対する強度変調放射線治療を用いた化学放射線療法の多施設共同第Ⅱ相臨床試験
  • 局所進行子宮頸癌に対する画像誘導小線源治療に関する多施設共同前向き観察研究
  • T1-2N0-1M0中咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同非ランダム化検証的試験
  • 切除不能、局所療法不適の肝細胞癌に対する重粒子線治療の多施設共同臨床試験(J-CROS1505LIVER)
  • ネオアジュバント化学療法前の腋窩リンパ節陽性がネオアジュバント化学療法後に病理学的陰性に転じた患者を対象として、乳房切除後胸壁及び所属リンパ節の外部放射線治療、並びに腫瘤切除後所属リンパ節放射線治療を評価する第Ⅲ相無作為化臨床試験
  • 切除不能、局所療法不適の肝細胞癌に対する重粒子線治療の多施設共同臨床試験
  • 子宮頸がん根治的放射線治療における組織内照射併用腔内照射の第Ⅰ/Ⅱ相試験
  • 臨床病期ⅠA期非小細胞肺癌もしくは臨床的に原発性肺癌と診断された3cm以下の孤立性肺腫瘍(手術不能例・手術拒否例)に対する体幹部定位放射線治療のランダム化比較試験(J-SBRT)
  • 手術不能肺野型Ⅰ期非小細胞肺癌に対する重粒子線治療の多施設共同臨床試験研究実施計画書番号:J-CROS1501LUNG
  • 局所限局性前立腺癌高リスク症例に対する重粒子線治療の多施設共同臨床試験(J-CROS1509)
  • JCOG1402:子宮頸癌術後再発高リスクに対する強度変調放射線治療(IMRT)を用いた術後同時化学放射線療法の多施設共同非ランダム化検証的試験
  • JCOG-バイオバンク・ジャパン連携バイオバンク実施計画書JCOG1402
  • CIPHER:A Prospective,Multi-Center Randomized Phase3 Trial of Carbon Ion versus Conventional Photon Radiation Therapy for Locally Advanced,Unresectable Pancreatic Cancer
  • 局所進行子宮頸癌に対する3次元画像誘導小線源治療(Cervix-V)3D-Image-guided brachytherapy for Locally Advanced Cervical Cancer(Cervix-V)
  • 直腸癌術後骨盤内再発に対する重粒子線治療に関する有効性安全性試験J-CROS1506 Rectum A clinical trial for efficacy and safety of carbon-ion radiotherapy on pelvic recurrent rectal cancer J-CROS1506
  • 前立腺がんに対する強度変調放射線治療の多施設前向き登録A registry of Nation Japanese Radiation Oncology Study Group:Intensity-modulated radiationtherapy for prostatecancer (JROSG-IMRT-PC01)
  • 消化管近接骨軟部肉腫に対するスペーサー留置術後粒子線治療の多施設前向き観察登録研究
  • 放射線治療に対するExceptional responseを規定する分子遺伝学特徴を明らかにする多施設共同研究
  • Ⅲ期非小細胞肺癌症例に対する胸部重粒子線治療後デュルバルマブ(MEDI4736)維持療法の第Ⅱ相試験(GUNMA1801/NEJ039B)
  • JCOG1612:局所切除後の垂直断端陰性かつ高リスク下部直腸粘膜下層浸潤癌(pT1 癌)に対するカペシタビン併用放射線療法の単群検証的試験
  • 子宮頸癌に対する三次元画像誘導小線源治療における高リスク臨床標的体積の画像モダリティ間での比較研究:日本放射線腫瘍学研究機構多施設調査

〈多施設後向き研究〉

  • 全国放射線治療症例に基づく放射線治療の実態調査および質評価
  • 全国重粒子線治療症例の登録および臨床評価
  • 炭素線治療多施設臨床研究のQAのための治療計画ドライラン
  • 子宮頸部腺癌の免疫組織学的評価とその放射線治療予後に関する後向き観察研究
  • 転移性肺腫瘍に対する重粒子線治療の多施設共同後ろ向き観察研究
  • 骨盤悪性骨軟部腫瘍に対し、重粒子線照射または外科的切除を行った症例の治療成績検討のための多施設共同研究
  • 我が国における再照射の現状実態調査 -粒子線治療による再照射症例集積研究―
  • 光子線治療リアルワールドデータベースの構築
  • 子宮頸がんに対するA群:腔内照射とB群:組織内照射併用腔内照射の遡及的比較研究(国際多施設共同遡及的観察研究)
  • X線治療後再発頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療の多施設共同後向き観察研究
  • "日本における限局性前立腺がんに対するヨウ素125密封小線源永久挿入療法の長期予後に関する継続予後調査研究
  • 付随研究:非通院患者の予後に関する郵送調査"
  • 日本における限局性前立腺がんに対するヨウ素125密封小線源永久挿入療法の長期予後に関する継続予後調査研究

〈単施設前向き研究〉

  • 原発性頭蓋底腫瘍に対する炭素イオン線治療の有効性・安全性についての前向き観察研究(GUNMA0905)
  • 局所進行子宮頸癌に対する画像誘導小線源治療併用炭素イオン線治療の有効性・安全性試験
  • 血友病/HIV/HCV共感染の肝細胞癌に対する重粒子線治療の有効性・安全性試験(プロトコール番号:GUNMA1701)
  • 肝悪性腫瘍を対象とした重粒子線治療におけるT2*mappingおよびEOB-Primovistの有用性に関する検討
  • 切除不能局所進行非小細胞肺癌に対するCDDP/S-1/炭素イオン線併用療法の安全性確認試験
  • 頭頚部放射線治療時における放射線治療室内のエアロゾルによる環境汚染について
  • 子宮頸癌の放射線治療反応性に関与する遺伝子の同定に関する研究
  • 炭素線治療における患者の日ごとの体内変動および照射線量評価の研究2
  • 局所進行膵癌に対するS-1併用炭素イオン線治療に関する前向き観察研究(GUNMA1501)
  •  
  • 前立腺癌に対する炭素イオン線12回照射のQOLの前向き調査研究
  • メタボローム解析を用いた消化管癌におけるバイオマーカーの探求
  • 頭頸部粘膜悪性黒色腫における重粒子線治療についての前向きレジストリ観察研究(群馬大学重粒子線治療頭頸部腫瘍専門部会:GUNMA 2101)
  • 口腔内細菌叢と放射線性口腔粘膜炎発症に関する前向き研究
  • 頸胸部悪性腫瘍に対する重粒子線照射あるいは X 線照射による心臓電気的影響の前向き観察研究

〈単施設後向き研究〉

  • 頭頸部扁平上皮癌および非扁平上皮癌に対するX線治療の後向き観察研究
  • 頭頸部癌で重粒子線治療を受ける患者に対する線量モデルを用いたセルフケアプログラムの介入と効果
  • 孤立性リンパ節再発に対する重粒子線治療の多施設共同後ろ向き観察研究
  • 炭素線照射後自己放射化PET/CTによる線量分布解析
  • 乳癌に対する放射線治療における腫瘍と正常臓器に対する線量分布の解析
  • 腹部領域炭素線治療における体内環境変化に対する治療計画及び位置照合方法の検討
  • 臨床病期I期非小細胞肺癌に対する重粒子線治療と体幹部定位放射線治療の費用対効果に関する研究
  • 難治性不整脈に対する重粒子線治療と定位放射線治療のシミュレーションによる線量分布比較
  • 限局性肝細胞癌に対する重粒子線治療と肝動脈化学塞栓療法の医療経済研究
  • 炭素線治療におけるモンテカルロシミュレーションツールの研究・開発
  • 頭頸部悪性腫瘍に対する重粒子線治療後の味覚障害に関する研究
  • 頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療の治療成績と有害事象に関する研究
  • 重粒子線治療応答性に関連する遺伝子変異の解析フロー確立のための後向きパイロット研究
  • 多職種評価による頭頸部重粒子線治療に伴う皮膚障害の予測・予防に関する研究
  • 多職種評価による頭頸部重粒子線治療に伴う皮膚障害の予測・予防に関する研究
  • 子宮頸癌に対する放射線治療の後向き観察研究
  • ヒト血液細胞に及ぼす宇宙空間を模擬した微小重力と宇宙放射線の複合影響
  • 肺腫瘍に対する重粒子線治療の治療成績と有害事象に関する研究
  • 植え込み型心臓電気デバイスに対する重粒子線の影響に関する研究
  • 尾状葉発生の肝細胞癌に対する重粒子線治療の効果、安全性に関する遡及的研究
  • 婦人科腫瘍に対する3次元画像誘導小線源治療における線量分布の遡及的解析
  • 前立腺癌に対する重粒子線治療に関する遡及的解析
  • 前立腺癌の重粒子線治療に必要な標的領域作成を補助するAIの作成
  • 頭頸部粘膜悪性黒色腫における重粒子線治療後の抗悪性黒色腫治療薬使用の有効性・安全性についての後ろ向き観察研究
  • 分割体積画像照合法による重粒子線治療照射影響評価に関する研究
  • 頭頸部重粒子線治療におけるロバスト(堅固)な治療計画に関する研究
  • 膵臓癌に対する重粒子線治療におけるLET分布とその改善に関する研究
  • 重粒子線治療における婦人科用スペーサーのフィルム線量分布評価
  • 大規模既存情報を用いた人工知能技術による重粒子線・光子線治療の効果予測ならびに照射技法最適化シーズ探索研究

当教室では国内外の数多くの研究機関と共同研究をおこなっています。

北アメリカ
MGH/Harvard Medical School, National Cancer Institute, NASA, University of Texas MD Anderson Cancer Center, Stanford University School of Medicine, University of Texas South Western, University of South Carolina, University of California Los Angeles, Prairie View A & M University(アメリカ合衆国), University of Guadalajara(メキシコ)

ヨーロッパ
University of Cambridge(英国), GSI Helmholtzzentrum für Schwerionenforschung, University Konstanz(ドイツ), University of Bergen(ノルウェー), University of Bologna(イタリア)

アジア・オセアニア
Korea Institute of Radiological and Medical Sciences, Korea University, Seoul National University, Dongnam Institute of Radiological and Medical Sciences, Daegu Catholic University(韓国), China Institute of Atomic Energy(中国), Dr. Ciptomangunkusumo National General Hospital(インドネシア), University of Wollongong(オーストラリア)

日本
国立がん研究センター, 理化学研究所, 国立国際医療研究センター研究所, 量研・放射線医学総合研究所ならびに高崎量子応用研究所, 統計数理研究所, 宇宙航空研究開発機構, 北海道大学, 東北大学, 山形大学, 福島県立医科大学, 東京大学, 東京医科歯科大学, 慶應義塾大学, 筑波大学, 自治医科大学, 埼玉大学, 埼玉県立がんセンター, 茨城大学, 横浜市立大学, 群馬県立県民健康科学大学, 群馬県立がんセンター, 高崎総合医療センター, 日高病院, 昭和大学, 帝京大学, 国際医療福祉大学, 東海大学, 富山大学, 金沢大学, 公立小松大学, 名古屋大学, 岐阜大学, 岐阜薬科大学, 近畿大学, 大阪大学, 大阪府立大学, 京都大学, 京都工芸繊維大学, 奈良県立医科大学, 岡山大学, 広島大学, 同志社大学, 徳島大学, 九州大学, 福岡工業大学, 沖縄科学技術大学院大学

そのほか学内、企業との共同研究実績も多数あります。