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論文紹介

著者の顔画像河村 英将先生
08 MAY 2023
Zebra among Horses
論文画像
前立腺がんには導管癌という特殊なタイプがあるのですが、数が少ないためどのような治療が良いかあまりわかっていません。そこで、JROSGという日本の放射線治療の共同研究グループで症例を集めて解析、報告しました。各施設にどのくらい症例がいるかのアンケートから始めましたが、多施設共同のプロトコール作成、データ収集などずいぶん時間がかかってしまいました。慣れない、つたない運営でしたが、多くの施設の先生方のあたたかいご指導と、ご協力により何とか完遂できました。
Japanese Journal of Clinical Oncology
doi:org/10.1093/jjco/hyac180
著者の顔画像久保 亘輝先生
30 APRIL 2023
Radiotherapy for Epstein-Barr Virus-Positive Mucocutaneous Ulcer
論文画像
臨床の現場では教科書に載っていないような稀な疾患をもった患者さんに出会うことがあります。そのような疾患に対しては、どんな治療方法が良いのか、まだはっきりとわかっておりません。そこで役立つのが症例報告です。EBVMCUという疾患に対する放射線治療の具体的な線量はこれまでほとんど報告されていませんでした。今回、私達は4 Gy/2回という少ない線量で治療をして、1年間は制御できたという報告をしました。このような報告が積み重なることで標準治療が確立されていくのだと思います。
Cureus
doi: 10.7759/cureus.30936
著者の顔画像Raj Kumar Parajuli先生
22 APRIL 2023
Development and Applications of Compton Camera - A Review
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コンプトンカメラの歴史は天文観測における放射線源の検出から始まりました。その後、環境放射線測定、核画像診断、放射線治療における放射線量測定、さらには国家安全保障領域などへと応用が進みました。コンプトンカメラの開発と実践を概説する論文はこれまでほとんどありませんでした。そこで、コンプトンカメラの主な開発・応用事例と、関連する画像処理アルゴリズムの研究開発について、ひとつの総説論文にまとめました。
Sensors
doi: org/10.3390/s22197374
著者の顔画像岡野 奈緒子先生
14 APRIL 2023
Does IMRT Improve Outcomes of Scalp Angiosarcoma?
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血管肉腫は頭部に比較的よくできる浸潤傾向の強い皮下腫瘍です。血管肉腫の治療は皮膚科の先生と協力しておこないます。頭部では、腫瘍のある皮膚・皮下組織が薄く、頭蓋骨のすぐ内側に脳があるため、脳を避けつつ皮膚に近い腫瘍に放射線をあてるために電子線を用いた放射線治療がおこなわれてきましたが、頭部が球状であるために均一な照射が難しいという問題がありました。これを克服するために、本論文ではIMRTという放射線治療技術を使って治療した成績を報告しました。
Anticancer Research
doi:10.21873/anticanres.16110
著者の顔画像柴 慎太郎先生
06 APRIL 2023
Does Bioabsorbable Spacer Stop Carbon-Ion Beams?
論文画像
消化管近接腫瘍の重粒子線治療をより安全に行うために、重粒子線治療後に体内に吸収される吸収性スペーサーが開発されました。しかし、吸収性スペーサーが人の体内で本当に重粒子のビームを止めているのかを確認したという報告はありませんでした。今回、AAPETを用いて吸収性スペーサーが体内で重粒子のビームを止めているのかを観察しました。結果は左の図の通りで、治療計画通り吸収性スペーサーが重粒子のビームを止めていたことが確認できました。
Tomography
doi: 10.3390/tomography8050195
著者の顔画像森 康晶先生
26 MARCH 2023
LETd Parameters Were Not Associated with SIF Prediction
論文画像
群馬大学やQST病院などで行われている重粒子線治療は高LET放射線である炭素イオン線を用いた治療であり、腫瘍をやっつける力がX線や陽子線より強いと言われています。その腫瘍をやっつける力が強いという作用が腫瘍ではなく正常組織である骨には悪さをしないの?という疑問に一つの答えを出しました。この研究では高LET放射線は抗腫瘍効果を高めることができつつ、正常組織障害のリスクは上昇させないことを示唆する結果でした。QST病院で進めているマルチイオン照射の妥当性を支持する重要な成果です。
Radiotherapy and Oncology
doi: 10.1016/j.radonc.2022.10.008
著者の顔画像小此木 範之先生
15 MARCH 2023
An Asian Multi-National, Multi-Institutional, Retrospective Study on Image-Guided Brachytherapy in Cervical Adenocarcinoma and Adenosquamous Carcinoma
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子宮頸癌と一口に言っても、扁平上皮癌と腺癌で予後は大きく異なります。予後不良とされる子宮頸部腺癌に対して、画像誘導小線源治療の有効性はどの程度なのか、多施設・多国間の研究者と共に論文としてまとめました。小線源治療前までの腫瘍縮小率が予後に影響することが示され、一方で、病巣への線量と局所制御率は関連しないことも示唆され、子宮頸部腺癌に対する治療戦略を考える上で、興味深い結果となりました。執筆を通じて、他施設の先生の治療哲学を知る機会となり、思い出に残る一編となりました。
Journal of Contemporary Brachytherapy
doi: 10.5114/jcb.2022.119451
著者の顔画像柴 慎太郎先生
04 MARCH 2023
RT with H2O2 Gauze Bolus for Breast Cancer Involving the Skin Surface
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羽生総合病院では2018年よりTomotherapyを導入し放射線治療を開始しました。H2O2は以前より放射線増感効果があることが知られていましたが、近年英国でRT+H2O2の臨床試験が行われ良好な結果が得られた(こちらはH2O2を腫瘍に局注する方法です)ことで再度注目を集めています。本論文ではH2O2を局注ではなくガーゼに染み込ませて腫瘍の上に乗せるだけという比較的簡便で安全な方法で放射線治療と併用した症例を報告しました。適応がありそうな方がいたら検討してみるのもありかと思います。
Advances in Radiation Oncology
doi: 10.1016/j.adro.2022.100894
著者の顔画像岩永 素太郎先生
21 FEBRUARY 2023
Doble-Layer Omics of Castration- and X-Ray-Resistant Prostate Cancer Cells
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アンドロゲン除去により作出された去勢抵抗性・前立腺癌細胞株はX線に対して抵抗性を示す一方で重粒子線に対しては親株と同等の感受性を示しました。この感受性の差を検討するためにDNA解析とRNA解析を行った結果、AR遺伝子の変異や酸化ストレス軽減に関わるNRF2経路の関与が示唆されました。X線抵抗性腫瘍を重粒子線治療で克服できるかもしれないという、臨床につながる研究成果を得ることができました。いろんな方々のご支援の結果、やっと学位論文として発表することができました。本当にありがとうございました。
Journal of Radiation Research
doi:10.1093/jrr/rrac022
著者の顔画像田代 睦先生
10 FEBRUARY 2023
LET-Independent Calibration of Radio-Chromic Film for Carbon-Ion Beams
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平面の線量分布測定にEBT3などのGafchromic Filmが使われますが、反射読み取り型のRTQA2フィルムが本学の婦人科用スペーサー内の照射確認に使われています。4.8Gy (RBE)に限定した照射確認用としてこのフィルムの炭素線線量応答を調べたところ、EBT3に比べてLET依存性がかなり小さいことがわかりました。そこで、LET依存性を無視した線形関係で校正すると、SOBP内での物理線量範囲では5%以内の精度で線量が定量でき、MLCによる照射野エッジ位置については0.4mmの精度が確認できました。スペーサー内フィルムの定量的な評価が可能となります。
Physics and Imaging in Radiation Oncology
doi:10.1016/j.phro.2022.08.001