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論文紹介

著者の顔画像柴 慎太郎先生
29 OCTOBER 2023
RBE Values of Spot-scanning PBT at Shonan Kamakura General Hospital
論文画像
湘南鎌倉総合病院に設置された陽子線治療装置の殺細胞効果を確認した実験の結果をまとめた論文です。他施設と同様にちゃんとした陽子線が出ていることが確認できました。この論文に関して新しい知見はほとんどありません。どちらかというと湘南鎌倉総合病院で放射線治療の生物実験ができるか確認する目的で行った実験を、「どうせだったら論文にしよう」と思い書きました。生物実験をやるのが初めてというスタッフがほとんどの中、無事結果を出せたので良い経験になったと思います。
In Vivo
doi: 10.21873/invivo.13175
著者の顔画像髙草木 陽介先生
19 OCTOBER 2023
CIRT for Prostate Cancer After Rectal Cancer Surgery
論文画像
直腸癌の手術歴のある前立腺癌患者では、治療方法は意外と限られています。骨盤内手術の既往によって前立腺癌に対する根治切除は適応外となるため、放射線治療が有望と思われますが、こうした症例に対する放射線治療の報告は少ないのが現状です。そこで、当院での直腸癌の手術歴のある前立腺癌に対する重粒子線治療の成績を調べました。過去の研究と単純に比較はできませんが、直腸癌の手術歴があると晩期の直腸出血の頻度はやはり高くなる可能性がありそうです。しかし、重篤な毒性は認められず、治療の選択肢には十分なり得ると考えられました。
Anticancer Research
doi:10.21873/anticanres.16435
著者の顔画像尾池 貴洋先生
07 OCTOBER 2023
Screaming for Vengeance
論文画像
いくつかの雑誌に蹴られた後、知らない雑誌にtransferを勧められました。軽音出身の私にはこれ(アイキャッチ画像ご参照)しか思い浮かびませんでしたが、名盤なのでまあいっか、と投稿をポチったところ10ヶ月放置された挙げ句にアクセプトされました。オンラインジャーナルが乱立し、ボランティアに基づくピアレビューシステムが崩壊しつつあると感じています。論文内容は新規オンコメタボライトであるクレアチンリボシドの照射後血中動態を初報告したものです。
Heliyon
doi:10.1016/j.heliyon.2023.e16684
著者の顔画像武者 篤先生
29 SEPTEMBER 2023
Immune Checkpoint Inhibitor for Recurrent Head and Neck Mucosal Melanoma Post-Carbon-Ion Radiotherapy
論文画像
頭頸部悪性黒色腫に対する重粒子線治療の成績は、局所制御率こそ良好な成績でしたが、遠隔転移の発生が生存率を下げる大きな原因とされていました。2014年に免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が発表され、悪性腫瘍全般に対する他治療困難や遠隔転移に対しても戦える望みが出てきました。本報告では頭頸部悪性黒色腫に対する重粒子線治療後に不幸にも再発・転移が生じた際、ICIがどの程度応用され、どのような効果があったのかを解析しています。重粒子線治療で局所制御され遠隔転移が生じても、ICIによって予後良好な症例も散見され、併用療法の可能性を期待できる結果でした。今後は前向き試験による、より詳細な報告が待たれます。
Cancer Reports
doi: 10.1002/cnr2.1825
著者の顔画像水上 達治先生
21 SEPTEMBER 2023
C-Ion Radiotherapy for Inoperable Upper Tract Ureteral Cancer
論文画像
(8月に書いているので)暑中お見舞い申し上げます。こちらも暑いですが群馬は一層過酷なこととお察し致します。どうぞご自愛下さい。さて私もようやく論文出せました。最初の投稿から5誌ダメで1年9ヶ月かかりました。その間に食べて種を植えたマンゴーはここまで成長しました(写真)。めげそうでしたが河村先生、久保先生をはじめ、諸先生方のお力で世に出せました。ありがとうございました。尿管癌に対する重粒子線治療は統一治療方針から漏れてしまいましたが、こちらもいつか実る日がくればと思います。
Asian Pacific Journal of Cancer Prevention
doi: 10.1111/ajco.13960
著者の顔画像宮坂 勇平先生
13 SEPTEMBER 2023
CD8+TIL and Prognosis in Radiotherapy for Cervical SqCC
論文画像
この研究は福島県立医科大学の吉本由哉先生が群馬大学在職時にされていた研究を、私が引き継いで論文にまとめたものです。CD8陽性腫瘍浸潤Tリンパ球(CD8+TIL)はさまざまな癌腫で予後因子であると報告されていますが、この論文では臨床現場で使いやすい簡便な方法でCD8+TILを評価し、その有用性が示唆される結果となりました。全く新しいものを発見するという研究はとても価値があるものですが、実際に使いやすい方法を考えるという研究もまたやりがいのある仕事です。
Anticancer Research
doi:10.21873/anticanres.16368
著者の顔画像岡野 奈緒子先生
05 SEPTEMBER 2023
Is One Word Enough to The Wise?
論文画像
この論文は、以前私が群馬大学でのIP合併の1期非小細胞肺癌に対する重粒子線治療成績を報告した内容を多施設データに広げた結果をまとめた報告です。重粒子線治療については日本の経験が圧倒的に多いため、世界の大多数の情報を集めたとも言えるかもしれません。単施設からの報告はエビデンスレベルでは劣りますが、背景を理解し詳細な解析が可能です。「木を見て森を見ることはできたのか?」久保先生の後押しもあり、今回全国データを用いた研究に携わらせていただくことができ、良い経験となりました。
Journal of Radiation Research
doi: 10.1093/jrr/rrad008.
著者の顔画像髙草木 陽介先生
28 AUGUST 2023
Intensity Modulated Carbon Ion Radiotherapy (IMCT) for Bone and Soft Tissue Tumor
論文画像
神奈川県立がんセンターの重粒子線治療は、スキャニング法を用いています。スキャニング法は自由度の高い線量分布をつくることができます。複数方向から照射する場合、通常はそれぞれのビームの線量は均一です。それに対してIMCTでは、X線でのIMRTと同じように各ビームの線量を不均一にして、その合算で最適な線量分布を作成します。このIMCTの技術を用いることで、脊髄などの重要臓器の線量低減が可能です。単純にすごいなぁと思ったので、その成績をまとめてみることにしました。
Anticancer Research
doi:10.21873/anticanres.16446
著者の顔画像柴 慎太郎先生
20 AUGUST 2023
C-ion RT for Liver Oligometastases: National Registry Data Analysis
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少数転移性肝腫瘍に対する重粒子線治療の成績の報告です。国内の重粒子線治療施設で行なわれている全例登録のデータを使わせていただいた報告になります。少数転移性腫瘍というのは比較的新しい概念ですが、近年、局所治療による予後改善を示唆する報告が増加しています。今回の報告は、重粒子線治療が転移性腫瘍に対する集学的治療における局所治療の一つになり得るのではないかという内容です。最後になりますが、データ登録・解析に関わられた方に、この場をお借りして御礼申し上げます。
Cancer Science
doi: 10.1111/cas.15871
著者の顔画像川嶋 基敬先生
12 AUGUST 2023
Assessment of a Self-Inspection Method and Reporting Measured Electrometer Correction Factors for Reference-Class Electrometers in Radiotherapy
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放射線治療の標準測定システムは電位計や電離箱などで構成されています。近年、これらの校正方法は従来の一体校正から分離校正へと進んでおり、電位計の校正定数が各施設へ渡されるようになりました。しかし、諸ガイドラインにおいては、点検項目として電位計の性能を確認するための0点シフトや0点ドリフトなどが挙げられているのみであり、絶対値の測定は推奨されていません。そこで本研究では、自施設において電位計校正定数を測定しました。電位計の絶対値を測定した報告はこれまでにないため、本研究結果がガイドラインのレファレンスとして用いられることに大きく期待しています。
Journal of Applied Clinical Medical Physics
doi: 10.1002/acm2.14082