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2018年

学会報告記:岩永 素太郎先生(群馬大学)

レジデント便り

 皆様、お世話になっております。入局3年目の岩永素太郎です。今回は第9回放射線外科学会に参加しましたので僭越ながら報告をいたします。

 放射線外科学会は脳神経外科医と放射線腫瘍医の知識の交流などを通して放射線外科の発展を目指している学会で2009年より年1回の学術集会を開催しています。今回は、「新たな放射線外科の創造−生物学と臨床の融合−」をテーマとして埼玉医科大学総合医療センター放射線腫瘍科 教授 髙橋建夫先生が大会長となりウエスタ川越で開催されました。参加者は114名で9時〜16時過ぎまでの日程で行われました。一般演題のほか、医学物理・粒子線のミニセミナーや放射線生物・免疫の要望演題、腫瘍免疫の特別講演、脳腫瘍の画像検査に関する教育講演など非常に内容の濃い1日でした。

 群馬大学や関連施設からも多数の発表がありました。陽子線や重粒子線の発表が多いのも特徴だと感じました。その中でも興味深い発表として「転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療後、長期経過観察中に局所再発と放射線脳壊死の鑑別に苦慮し、メチオニンPETが施行された2例の報告」がありました。転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療は、症例数も多く、定位放射線治療を行っている施設では一般的な治療です。高い局所制御が得られる可能性がありますが、臨床上問題となるのが放射線脳壊死と局所再発の鑑別です。私が以前勤めていた関東脳神経外科病院でも年に数例そのような経験があり、その都度対応に苦慮していました。2017年に発行された『症候性放射線壊死診療ガイドライン』では放射線脳壊死についてメチオニンPETの有用性についても記述されていますが、私自身としては今まで実際に活用したことがなかったため今回の発表を興味深く拝見させていただきました。発表の結論としてはメチオニンPETでの放射線脳壊死の診断は困難な場合もあり、臨床経過なども注視して判断する必要があるというものでした。

 全体を通して放射線生物学から臨床まで非常に勉強になる学術集会でした。来年度は愛知での開催予定です。

 以上、第9回放射線外科学会報告記でした。