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2019年

学会報告記:岩永 素太郎先生(前橋赤十字病院)

レジデント便り

第32回高精度放射線外部照射部会学術大会報告記

 皆様、お世話になっております。入局4年目の岩永素太郎です。今回は上記学会に参加しましたので僭越ながら報告をいたします。

 今回の学会は国立がんセンター中央病院 放射線治療科の伊丹純先生が当番世話人となり虎ノ門ヒルズフォーラムで3月2日に開催されました。「極める」をテーマとして、「診断・放射線治療におけるAIの展開」や「Adaptive放射線治療の最新技術」などのシンポジウムが開催されました。その中でも私が特に興味深いと思ったのが「腫瘍内の超高線量の安全性と治療効果」というシンポジウムでした。高線量域の設定について賛成派および慎重派に分かれて4人のシンポジストが発表を行い、その後に指定発言として子宮頸癌組織内照射併用腔内照射における高線量と治療効果の関係について臨床試験の結果が示されました。

 賛成派の立場としては腫瘍内の高線量域をつくることにより局所制御の向上と周囲の正常組織への線量低減が図れる可能性があることが示されました。一方、慎重派からは肺や肝臓などの臓器における呼吸性移動による分布の不確実性や再現性について懸念が示されました。また、臨床成績の観点でも肺の定位照射において高線量域をつくるRTOGの成績と高線量域を許容しないJCOGの成績を比較し、局所制御はRTOGが優れるが、生存において両者に大きな差がないことから高線量域は必ずしも必要ではないのではないかといった意見が示されました。子宮頸癌の結果としては処方線量の200%以上照射されたHR-CTVが34%以上であった群で局所制御が良好であったことが発表されました。

 ただ、高線量域の扱いについては各施設間で差が大きく、安全性の確保や評価について今後検討が必要であると思いました。

 私個人としてもいままでのサイバーナイフの経験から脳定位照射において高線量域が高い局所制御と有害事象の軽減の一因となっている可能性を感じていました。ただ体幹部定位照射において、それをどのように応用していくのかは日々の臨床で特に疑問に思っていた点であり、今回のシンポジウムは非常に興味深いものとなりました。

 以上、学会報告でした。