メインイメージ

2021年

寄稿-重粒子線医学センター教授就任にあたって:河村英将先生(群馬大学)

同門の先生より

 思い起こすと、大学に入学した頃「教授」とは特別な、自分からはかけ離れた存在だったと思います。大学生活の中で教授の先生方と触れ合い、また、働き始めて現場で一緒に働きご指導いただいていた先生がどんどんと教授として栄転され、少し上の先輩方や同学年の仲間も教授となり羽ばたいていく様子を見て、より身近な存在になっていったということでしょうか。近くに成果を残していく人がたくさんいるという経験は、群馬大学放射線科の強みの一つだと感じます。

 今回私が教授に就任できたのは、大野達也先生が腫瘍放射線学の教授となって初めての教授ということもあり、「まず隗より始めよ」という部分もあろうかと思います。群馬大学放射線科は、いろいろな形で本当にたくさんのチャンスが与えられるところだと思います。先輩方からのご指導のもと、与えられた仕事をしていけば、私のようなものでも評価してもらえるということを実感し、感謝しています。重粒子線治療など新規治療技術の導入といった放射線治療に直接関係あることから、ICUでの勤務といったそれ以外のこと、留学、医会長、様々な組織の運営、学会開催など色々な経験をさせていただきました。チャンスというのはそれとわかるように与えられたり転がったりしているとは限らないし、むしろ、当人にはわからないことも多いと思いますが、経験の全てが現在の糧になっていると思います。私の場合、当時どのように思ったかは思い出せないところもありますが、少なくとも嫌々させられたという記憶はないので、先輩方のご配慮やご指導と、幸せな性格のおかげだと思います。「何か新しいこと、面白いことをしたい」と思って放射線科に入局した私にとって、このような様々チャンスを与えて頂いたのは期待を裏切らないものでした。

 今回、教授に就任したからには、群馬大学の重粒子という看板を汚さぬように精進を続け、今度は皆さんにチャンスを与えられるように努力していきたいと思います。群馬大学の重粒子線治療は10年を超え、前任の大野教授を初めとする皆さんの力で順調に実績を重ねています。しかしながら時間の経過とともに、機器の発展的な更新や治療人数の増加に合わせた体制の見直しなどやるべき課題もたくさん生じており、一つ一つ取り組んでいきたいと思います。複雑な組織の改組も予定されており、これを契機に医師はもちろん、物理部門、生物部門とのコミュニケーションをさらに高め、X線治療とのより有機的な統合を目指し、臨床および研究で相乗的な発展ができるよう力を注ぎたいと思います。以前のメールマガジンで示された大野先生の「日本の放射線治療をリードし、世界へ!」というビジョンのもとで腫瘍放射線学教室が発展していくためにはビジョンに賛同する仲間が必要です。プロジェクトを進めていく時にはリーダーシップも重要ですが、面白そうだから一緒にやろうというマインドが強力な推進力になると感じています。リーダーと若い先生方を繋ぐ一つの糸として、未熟な新米教授というのも役に立つ部分もあるだろうと思います。新型コロナウイルス感染症拡大を契機に社会の変化は加速しており、新しい、多様なアプローチによる変化が求められています。歴史と伝統ある群馬大学放射線科が、最大の強みである多様な人材の力によってさらに発展できるように、皆さんと頑張りたいと思います。放射線科医となって少し経ちますが、今までも、これからも、新しいことに挑戦し続けることができるのは幸せなことだと思います。それを可能とする教室の底力に感謝し、これから加わってくれる皆さんも含めた教室の未来に期待しています。

2021年2月

群馬大学重粒子線医学推進機構重粒子線医学センター
河村英将