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2024年

群馬大学での小線源治療の取り組み:安藤 謙先生

同門の先生より

こんにちは。2回目の今回は群馬大学での小線源治療の取り組みについてお話しさせていただきます。 

群馬大学では婦人科腫瘍、特に子宮頸癌に対する小線源治療に力を入れています。子宮頸癌は早期から進行期まで放射線治療で根治が期待できる腫瘍です。子宮頸癌に対する放射線治療は、体の外から放射線を照射する外部照射と、小線源治療(腔内照射)から構成されます(下図)。

この小線源治療の世界では古くから A 点と呼ばれる、X 線の透視画像によってアプリケーターの位置から幾何学的に定義された点を目掛けて決まった量の 放射線を画一的に投与していました。言わば十把一絡げの治療をしていたわけ です。しかしそれでは大きな腫瘍やいびつな形をした腫瘍を制御することが難 しいことがわかってきました。その当時、外部照射では当たり前の様に治療計画 用に撮影した CT 画像に基づく 3 次元の治療計画が行われていましたが、小線源治療は上述のように未だに 2 次元の透視画像を元に治療計画をおこなっていました。そこで、小線源治療でもアプリケーターを挿入した状態で CT 等の 3 次 元画像を撮影し、画像を元に線量を調節する、画像誘導小線源治療(Image- guided brachytherapy: IGBT)が開発されました。IGBT を世界で初めて報告されたのは当教室の中野隆史前教授で、1987 年に千葉の放射線医学総合研究所に 所属されていた時代に発表されています。2000 年代に入り IGBT はヨーロッパ を中心に普及し、日本でも群馬大学を中心として IGBT が徐々に普及してきま した。当院では本邦で大野達也教授が中心となり、いびつで大きい腫瘍に対し て、通常の腔内照射と腫瘍内に針状のアプリケーターを刺入する組織内照射を組み合わせる、ハイブリッド腔内照射が開発されました。ハイブリッド腔内照射の登場によって、小さい腫瘍、大きい腫瘍、いびつな腫瘍、どんな形状の腫瘍に も対応できる IGBT が可能になり、優れた治療成績が得られています(下図)。 

さらに、2009 年に本邦で初めて大学病院内に重粒子線治療施設が併設され、2012 年からは世界で初めて局所進行子宮頸癌に対する重粒子線治療と IGBT との併用療法が開始されました。この治療は従来の X 線治療抵抗性の子宮頸部腺癌に特に優れた治療成績を示しました。その治療成績が認められ、当初先進医療で高額な費用がかかっていましたが、2022 年度からは保険収載されより多く の患者さんに受けてもらえるようになりました。

群馬大学ではこういった小線源治療の新規治療技術の開発に力を注いでいま す。5月の小線源治療部会では日本中の施設から新規治療技術についての発表 があり、熱い議論を交わします。次回はその学会の見どころをご紹介します。