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2024年

小線源治療とは:安藤 謙先生

同門の先生より

こんにちは。群馬大学放射線 治療科の安藤謙です。

今年の 5 月 24・25 日に、高崎の G メッセ群馬で大野教授を大会⻑として日本放射線腫瘍学会 小線源治療部会 第 26 回学術大会が開催されます。この学会では放射線治療の治療法の中でも小線源治療にフォーカスして、日本中からエキスパートが集結し、この治療の未来について熱く議論を交わします。 

開催に向けて、小線源治療の基礎から本学会の見どころまでを皆様にご紹介いたしますので、どうかお付き合いいただき、興味を持っていただいた方は、是非小線源部会にもご参加いただけると嬉しいです。

「小線源治療」という言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますので、 初回はまず、小線源治療全体のご紹介をします。 がんに対する放射線治療は、腫瘍に対する放射線の当て方で大きく分けると、 1体の外から電子線・X 線・粒子線などの放射線を当てる体外照射と、2放射 線同位元素(ラジオアイソトープ)から出るγ線・β線を使用し、腫瘍の内部 から放射線を当てる小線源治療に分かれます。その中でも、カプセルやワイヤー内に密封された放射線同位元素を腫瘍や周囲臓器内に留置して治療するものを密封小線源治療、内服薬や注射薬内に含まれる放射線同位元素が特定のがん細胞内に取り込まれる性質を利用して治療するものを非密封小線源治療(内 用療法)と呼びます。小線源部会では主に密封小線源治療を扱います。

密封小線源治療(以下、単に小線源治療と呼びます)を線源を留置する方法で分類すると、子宮や腟、食道、気管支などの管腔臓器内に管状のアプリケー タを挿入し、その内腔に線源を留置して治療する腔内照射と、前立腺や一部の 婦人科腫瘍で腫瘍内に針状のアプリケータを刺入し、線源を留置する組織内照射があります。いずれの方法でも、放射線の発生源である線源を体内に留置するので治療中の位置のずれが非常に少なく、また腫瘍に強く放射線を当てる一 方で、周囲の正常臓器への線量を低減し副作用を減らすことが可能です。それ ゆえ、小線源治療は”究極の高精度放射線治療”と言われています。

 小線源治療で治療されるがんとして代表的なものは、子宮頸癌をはじめとする婦人科腫瘍と前立腺癌です。その他にも舌癌や口腔癌といった頭頸部腫瘍に用いられることもあります。我々群馬大学では特に婦人科の小線源治療に力を入れていまして、次号では群馬大学の取り組みについてご紹介します。