着任挨拶:野田 真永先生(埼玉医科大学国際医療センター)
着任にあたり
平成29年4月1日付で着任しました、埼玉医科大学国際医療センターについて紹介します。当院は年間放射線治療患者数が約1400人で常時国内ベスト10には位置しています。また当院には連携しているいずれのがん診療科も教授陣をはじめ、国内を代表するエキスパートが揃っており、がん治療アクティビティが非常に高く、私もやりがいを感じながら日々の診療を行っています。キャンサーボードでの難治症例について、各診療科からの建設的な意見の応酬からは、担当医のがん患者に対する真摯な姿勢が感じられます。
当科常勤スタッフは同門である加藤真吾教授、岡崎祥平先生、小松秀一郎先生を含めた6名の医師と3名の医学物理士です。医学物理士とは同室で治療計画をし、昼食も共にする間柄であり、情報の共有が図れます。また、看護師、放射線技師も隣室で働いており、職種間の垣根が低く、まさに全員で放射線治療を作り上げている感覚があります。
放射線治療の種類としては、直線加速器による高精度放射線治療とサイバーナイフによる定位放射線治療、そして高線量率・低線量率小線源治療が行われており、粒子線治療以外の全ての治療が当院では実施されています。症例数は豊富であり、岡崎先生、小松先生が中心となり毎日1日平均6件の外部照射の治療計画を担当します。小線源治療も週平均で子宮頸癌が4件、前立腺癌が高・低線量率各1件の症例がありますので、両先生ともに常に上級医からのフィードバックを受けながら、非常に良い経験を積んでいます。若手医師には、この診療の中から生じる臨床的疑問点について、積極的に学会発表や臨床研究の論文発表として報告することを奨励しています。これまでにも田巻倫明先生や阿部孝憲先生も当院在任中に数々の論文を執筆されました。
また、当院の特徴として、各診療科において国内外の臨床試験が多数実施されていることもあげられます。私も乳癌治療ではNRG-oncology*の臨床試験に放射線腫瘍医として参画しています。こういった活動により、国際的大規模臨床試験の流れを習得することができます。
そしてついに、2年後には先端放射線治療センター(新棟)が開設されます。今年度中に建設が開始される新棟には、現在の倍にあたる4台の高精度放射線治療対応型直線加速器と最新型のサイバーナイフも導入されます。これにより、当院放射線治療部門の年間治療患者数は増加し、がん研究センター中央病院や癌研有明病院のような大規模がん治療専門病院のそれに近づいていくことを想定しています。その一方で、当院は大学病院の一つであり、シニアレジデントらに対する臨床研究を含めた卒後教育ならびに医学生に対する放射線腫瘍学の啓蒙という卒前教育の充実を図ることも大切な使命であると認識しています。昨年度までは群馬大学の中野隆史教授のもとで後進の指導にあたる機会を多数頂いてきました。その中での成功も失敗も、今では指導医として成長するための糧となっていることを実感しています。今後は群馬大学で培った経験を埼玉医科大学国際医療センターでの教育・研究・診療に生かし、これまで以上に、若手医師が当院での研修をすれば、がん治療医として大きな成長を自覚できるような施設となるよう、私も当院の後期研修をはじめとする卒後教育体制の充実化に邁進してまいります。
NRG-oncology*:The National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project (乳癌)とhe Radiation Therapy Oncology Group (放射線治療)とthe Gynecologic Oncology Group (婦人科腫瘍)の3つのがん治療組織がアメリカ国立がん研究所のもとに合併した組織。
平成29年4月吉日
埼玉医科大学国際医療センター 放射線腫瘍科
教授 野田真永