着任挨拶:若月 優先生(自治医科大学)
平成14年入局の若月優です。このたび、平成28年4月1日付けで自治医科大学放射線科/中央放射線部の教授を拝命いたしました。30代最後の年にこのような身に余る大役をいただけたのは、群馬大学大学院医学系研究科腫瘍放射線学教室の医会並びに同門会の皆様方の御指導・御支援のおかげと心より感謝申し上げます。
自治医科大学の放射線治療部門は私を含めて、現在常勤医2名、レジデント1名、非常勤医師数名の小所帯でありますが、3台の放射線治療装置と1台の小線源治療装置で年間約1000名(新患800名)(うちIMRT約100件、定位照射約50件、腔内照射約30件)の治療を行っております。栃木県内はもとより、茨城県西部、埼玉県北部の放射線治療を支えております。先任の教授も約半分の患者を担当されていたとのことで、医者になって一番臨床に重きを置いた1か月となりました。
しかしながら大学病院の役割は『教育』、『研究』、『臨床』の多岐にわたりますので、臨床だけでなく、教育・研究も臨床部門が軌道に乗りましたら頑張っていきたいと考えております。特に、放射線腫瘍医の育成こそが自分が群馬大学放射線科に入局以来のライフワークとしており、自治医大のように放射線腫瘍医の少ない大学病院でいかに放射線腫瘍医を増やしていくかを次のテーマと考えております。自分が群馬大学で多くの力を注いできた学生勧誘の面では、自治医大の学生には卒後9年間の義務年限があるため学生からの入局者は望めない環境にあります。そのため、研修医をいかに放射線腫瘍学に興味を持たせ、入局者を増やすかという新たなミッションに臨んでいく必要があり、そのための方法を模索しております。
一方で『研究』や『臨床』といった意味では、自分が今まで群馬大学や放射線医学総合研究所で努めてきた重粒子線治療などの最先端の医療とは異なり、自治医大の大学としての使命は、地域における医療の均てん化というテーマになります。「放射線治療の均てん化とは何が必要なのか」を考え、現在新たな取り組みを考えております。すなわち「放射線治療の均てん化」とは放射線治療機械の充足や普及、先端放射線治療の普及といったことだけでなく、「放射線治療を受ける機会の均てん化」ではないかと考えております。実際に自治医大に来て1か月間で、栃木県の中で地域によっては十分な放射線治療を受けられていない現状を目の当たりにしております。栃木県と同様に日本全国で見ても放射線腫瘍医が充足していない現状から、全国で同様の環境があることは想像されますが、全国の津々浦々に放射線治療装置だけでなく放射線腫瘍医を配置することは困難であることは言うまでもないかと思います。そのためにも根治治療だけでなく緩和治療においても、必要とした患者が適切なタイミングで放射線治療を受けることが可能なシステムを作り上げる必要があると考えております。
まだまだ新たな一歩を踏み出したばかりで、雲をも掴むような状況ではありますが、自治医大に赴任して大きな可能性と未来を感じております。群馬大学放射線科出身の名前に恥じないように、また多くの医会の後輩たちの目標となれるように精進していきたいと考えております。まだまだ至らぬ部分も多く、御迷惑をおかけすることもあるかと思います。今後とも御指導・御鞭撻のほどよろしくお願いいたします。