新専門医制度 解説:松井利晃先生 (QST病院)
皆様、ご無沙汰しております。平成28年卒の松井利晃です。本日は近況報告も兼ねて、新専門医制度について、主にこれから研修に入る学生・研修医の方向けに、私見も交えながら簡単にご紹介させていただきたいと思います。みなさんの進路選択や不安・疑問解消の一助になれば幸いです。
なによりまず、「専門医」って何? ということから
まず、新専門医制度について簡単に説明しようと思います。新専門医制度が始まる以前は、日本での専門医の標榜は主に学会主導であり、様々な領域・専門分野の学会が独自に制度を作っていた経緯があります。こうした状況を整理し、「専門医」を皆(非医療従事者など)にとってわかりやすい資格にする必要があるという方針をもとに、専門医を第三者機関である日本専門医機構が認定するものと定めました。認定は二階建て(二段階)となり、一階部分にあたる内科・外科・小児科・放射線科といった19の基本領域と、二階部分にあたるサブスペシャルティ領域の二段階に分けて行われることになります(参考:日本専門医機構ホームページ、https://jmsb.or.jp)。放射線科は一階部分が 『放射線科専門医』、二階部分が 『放射線治療専門医』、『放射線診断専門医』 となっています。
日本専門医機構は2014年5月に設立され、その後2018年4月から上記のプログラムが開始されています。私を含め後ほど紹介させていただく私の同期がこのプログラムで専門医を目指す初代ということになり、専攻医としてプログラムに登録し専門医取得を目指しています。まず初めに申し上げますが、本制度は刻一刻と変化・修正が加わっておりますので、最新情報はその都度、専門医機構HP・各学会HP・プログラム担当者などへご確認ください。
「放射線科専門医」って何?
放射線科プログラム(上記の1階部分)では最低3年間の研修施設群での研修が必要となります。研修施設群は「基幹施設」及び「連携施設」から構成されています。私は「群馬大学医学部附属病院放射線科」の専門研修プログラムに登録しており、「群馬大医学部附属病院放射線科及び核医学科」が基幹施設となります。連携施設は群馬県内・外の複数の病院が登録されています。放射線科として経験すべき事項としては大きく ①放射線治療、②放射線診断、③IVR (Interventional Radiology、画像下治療)があります(便宜上①~③と番号を振りました)。各内容を簡単に説明いたします。
① 放射線治療:X線、電子線または粒子線(陽子線、重粒子線)での治療があります。腫瘍に放射線を当てて治療を行います。根治目的や姑息的・緩和目的など幅広く治療を展開しています。
② 画像診断:X線(単純画像)、CT、MRI、核医学検査(PET-CTやシンチグラフィ)、超音波検査などを行います。得られた画像から疾患の有無を診断します。病院中で行われる「画像検査」に携わります。
③ IVR::X線(透視画像など)やCT、超音波などの画像診断装置で体の中を透かして見ながら、細い医療器具(カテーテルや針)を入れて、標的となる病気の治療を行っていきます。
群馬大学では①は「放射線科」、②③は主に「核医学科」が担当しています。
上記の①~③には経験すべき症例数が決まっており、明確な目標をもって研修および実務を行うことができます。各研修施設では指導医の先生の下、施設ごとの特徴を生かした経験を積むことができます。
実際、新制度始まって、どうなの?
ここからは私の同期(2018年4月プログラム参加)がどのような研修を行っているか紹介させていただきます。大学を中心として、複数の施設で特色を持った経験をさせていただいております。みなさんの参考になれば幸いです。
◆松井利晃 (本原稿著者)
出身大学:山口大学
初期研修:高崎総合医療センター
1年目:群馬大学医学部附属病院
・4-9月:放射線科で婦人科腫瘍、脳腫瘍など
・10-3月:核医学科で画像診断・IVRなど
2年目:群馬大学医学部附属病院
・4-9月:放射線科で肺癌、頭頸部腫瘍など
・10-3月:放射線科で乳癌、膵癌、骨軟部腫瘍など
3年目:QST病院 (旧放射線医学総合研究所病院)
婦人科腫瘍、乳癌、重粒子線治療、小線源治療
ひとこと:大学・他施設含め多くの指導医の先生から学ぶ機会があり、様々な視点で研鑽を積むことができています。特に画像診断は放射線治療を行う上でも必要不可欠なので、今後も積極的に学びたいと考えています。今は千葉県で重粒子線治療や小線源治療などに重点を置いて学ばせていただいています!
◆岡田光平
出身大学:新潟大学
初期研修:高崎総合医療センター
1年目:高崎総合医療センター 放射線治療科
全身の臓器の放射線治療を幅広く経験
2年目:群馬大学医学部附属病院 核医学科/放射線科
・4-9月:核医学科で画像診断やIVRを経験
・10-3月:放射線科で婦人科腫瘍、食道癌、脳腫瘍などを担当
3年目:群馬大学医学部附属病院 放射線科
婦人科腫瘍、食道癌、脳腫瘍などを担当
ひとこと:放射線治療の対象となる疾患は多岐にわたりますが、多くの先生の指導のもと、幅広く経験を積むことができています。
◆熊澤琢也
出身大学:群馬大学
初期研修:群馬大学医学部附属病院(桐生厚生総合病院とたすき掛け)
1年目:群馬大学医学部附属病院
・4-9月:核医学科で画像診断・IVRなど
・10-3月: 放射線科で肺頭頸部血液腫瘍など
2年目:群馬大学医学部附属病院
・放射線科で婦人科、食道、脳腫瘍など
3年目:佐久総合病院佐久医療センター 放射線治療科
全身の様々な腫瘍に対して、通常の三次元原体照射の他に、トモセラピーを用いたIMRTで外照射を行っています。また、婦人科腫瘍に対しては群馬大学と同様に画像誘導下小線源治療を行っています。
ひとこと:当科は指導体制の整った関連病院が数多く揃っているので、重粒子線治療に限らず様々な放射線治療について若いうちから学ぶことができます。また、画像診断の知識や超音波の技術は放射線治療の助けになっていると日々感じています。初期研修医、学生の皆さん、当科は教育体制が充実している科の一つだと思いますので、当科での後期研修を是非ご検討ください。
◆小林なお
出身大学:群馬大学
初期研修:群馬大学医学部附属病院
1-2年目:埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科
・外来では初診から担当医として治療にあたらせてもらえました。
・脳腫瘍、頭頚部、呼吸器、乳腺、消化器、婦人科、泌尿器科、骨軟部、小児、造血器、緩和ケアといった様々な領域を経験します。
3年目:群馬大学医学部附属病院
・4-9月:核医学科で画像診断・IVRなど。核医学科での研修を通して、解剖学やがん以外の疾患についても改めて勉強させていただいております。
ひとこと:放射線治療の技術が今も進歩し続けていると実感しています。より負担を軽減し、より効果を高めた治療を、より多くの患者さんへ届けたい、また、がん治療の進歩に少しでも貢献したいと思う気持ちをお持ちの先生方におすすめの科です。
学生・研修医の皆さんへ最後に
これから放射線科を目指しプログラム登録を考えている先生方が気になる点として、研修達成に必要となる「経験すべき症例数」を紹介したいと思います。機構認定専門医取得のために定められているのは(必須または目標を含む)下記になります。これとは別に、全身を診る放射線科特有の 「各臓器・疾患別の症例数」 も定まっております。参考までに私の達成状況も下記します! みなさん、一緒に放射線科を目指しませんか?
- 単純写真:400例・・・達成済み
- 消化管X線検査:60例・・・達成済み
- 超音波検査:120例・・・達成済み
- X線CT:600例・・・達成済み
- MRI :300例・・・達成済み
- 核医学:50例・・・達成済み
- 血管造影・IVR:30例・・・達成済み
- 放射線治療:30例・・・達成済み