2018年

　皆様、平素より大変お世話になっております。前橋赤十字病院放射線治療科の清原です。

　2017年1月に赴任し、同4月に前任の伊藤潤先生の後任として現在の部⻑の職につき、1年と5か月が経過しました。伊藤先生が1983年（昭和58年）に着任されて以来34年の⻑きにわたりご尽力されたこの放射線治療科を汚さぬよう、丁寧な仕事をしようという一念で職務に当たっている毎日です。

　今回こうして皆様に文章を読んでいただく機会を得ましたので、当院における我々の取り組みについてご紹介させて下さい。

　当院は本年6月1日をもって新病院に移転しました。準備として2018年1月〜5月にリニアック装置の移設および立ち上げを行ったため、その間、放射線治療は行いませんでした。その際には当院からの紹介として、近隣の施設の先生方に多数の症例を担当して頂きました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。その節は大変お世話になり、誠に有難うございます。

　新病院になりまず大きく変わったところは、これまで病院の端の建物の地下にあった放射線治療施設が、1階に上がった点です。病院の正面玄関から入ってほぼ直進で到達できる、患者さんにとってアクセスの良い場所に位置し、名称も改めて「放射線治療センター」となりました。

　スタッフは、医師が常勤2名・非常勤1名、診療放射線技師が5名（医学物理士3名含む）、看護師2名、受付2名で、技師・看護師とも増員して開院を迎えました。当院は例年約300例前後の治療実績があります。病院の基本方針の2項めに「災害・救急医療、急性期医療を担うことによって地域医療に貢献します」と謳っている通り、高度救命救急ならびに災害医療に特色のある当院ですが、その一方で、前橋市および周辺医療圏のがん患者さん、特に進行がんやいわゆる”Oncologic emergency”の患者さんが多く受診される施設でもあります。そのため、各診療科の先生方との綿密な連携は欠かせず、日頃の相談・協働に加え、院内のキャンサーボードの整備にも参画しています。地域がん診療連携拠点病院としての役割の一端を担うべく、放射線治療のみならずがん診療全般に貢献できるようスタッフ一丸となって取り組んでいます。

　また新病院では、既存のVarian社製 Clinac® iXに加えて、新病院にAccuray社製CyberKnife® M6を導入し、放射線治療装置が2台体制になりました。本年4月には常勤医師として、群馬大学より岩永素太郎先生に赴任して頂きました。私が当院赴任前に、サイバーナイフの勉強を兼ねて関東脳神経外科病院の非常勤医師を勤めていた際には、岩永先生にサイバーナイフの“いろは”から教えて頂いた経緯もあり、サイバーナイフ導入に際してまさにうってつけの着任であったと存じますし、また非常に心強い限りです。

　当院での最新の取り組みとして、リニアックのバージョンアップに伴い、6月から強度変調回転放 射線治療（VMAT）の導入を行いました。岩永先生ならびに非常勤の久保先生に力を発揮していただき、前立腺癌のみならず、頭頸部がん、原発性脳腫瘍、肛門癌などにVMATを導入し、高精度治療をこれまでより広い領域に適応できる状況となりました。特に頭頸部癌においては、耳鼻咽喉科の先生方と協働で化学放射線治療を実施しうる県内でも限られた施設のうちの一つでもあり、当院で頭頸部癌に対するVMATが実施可能になったことは地域医療においても大きな貢献になると考えています。

　2017年5月からは乳癌・乳房温存術後照射における寡分割照射法も開始しました（16回/22 日間）。同時期に、当院の乳腺・内分泌外科の常勤医が二人体制となりました。乳癌の手術件数も増加したタイミングで、適応となる多くの患者さんにとってより早期の社会復帰が可能となりますし、治療室のスループット向上にもつながっています。

　そしていよいよ、この9月からサイバーナイフ治療が開始となります。当面、頭頸部腫瘍（頭蓋内腫瘍を含む）と肺腫瘍から患者受け入れを始めています。既に院内から数例の治療適応患者の登録がありました。肝腫瘍と前立腺癌について開始時期は未定ですが、院内でマーカー留置術を行う体制が整い次第開始できるよう、鋭意準備を進めています。近隣の先生方に置かれましては、もし適応となる、またはご希望される患者がおいでの場合や、適応の相談などございましたら、我々までご連絡頂けますよう宜しくお願い申し上げます。

　前橋市および周辺医療圏における地域に根差したがん診療を行う拠点施設として、同時に、群馬大学腫瘍放射線学教室の臨床および教育におけるバックアップ機関としても力を発揮できるよう、スタッフ一同励んで参ります。新しい病院、新しいスタッフ、新しい治療装置で張り切って診療を行っておりますので、ご興味と機会がございましたら一度見学に来て頂けましたら嬉しい限りです。今後ともご指導ご鞭撻頂けますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます。