新年のご挨拶:中野 隆史教授
皆様、明ましておめでとうございます。新年にあたりご挨拶申し上げます。
昨年を振り返ってみますと、重粒子線治療におきましては年間500例の治療を行い、まだ短期間の経過ではありますが放医研の良好な治療成績をほぼ再現する経過をたどっております。患者数も着実に増えており、重粒子線治療に対する期待の大きさを改めて認識する次第です。皆様のご協力の賜物と感謝申し上げます。大学院教育ではグローバルリーダー養成プログラムにより放射線腫瘍医、物理工学研究者、生物学研究者の養成も軌道に乗ってきました。研究体制では、群馬大学が強みを有する先端研究分野のグローバル化を目指す、未来先端研究機構が創設され、私がその統合腫瘍学研究部門を任され、ハーバード大学のオープンラボラトリーを開設しました。最先端の実験装置が完備され、最先端の国際的研究ネットワークが構築され、申し分のない研究環境を整備しましたので、あとはすべて教室員の皆さんのやる気にかかっています。ここから世界に羽ばたく教室員が何人育つか楽しみにしています。
一方、国際的には、これまでの20年以上に渡るIAEA等のアジア地域国際貢献活動で得られた人脈を基盤にFederation of Asian Organizations of Radiation Oncology (FARO)を設立し事務局長として活動を開始しました。この組織はアジア地域各国の放射線腫瘍学会が連合し、教育、研究など幅広い分野で交流を深め、以ってアジア地域の放射線治療のレベル向上を目的としています。私たちの教室が放射線腫瘍学の分野でアジアを牽引する使命を皆で共有し、学術活動を展開したいと願っています。
さて、本年当教室は日本放射線腫瘍学会第28回学術大会の主催という大きなイベントを控えています。すでに昨年から準備を進めておりますが、今回のメインテーマは「高精度放射線治療時代の包括的放射線腫瘍学:Comprehensive Radiation Oncology in High-Precision Radiotherapy Era」とさせていただきました。これは、重粒子線治療を含む高精度放射線治療の急速な進歩・普及に伴い、腫瘍の局所制御は比較的容易に得られ、かつ、有害事象を少なく治療することができるようになりつつある中で、最終的な目標の一つである根治・治癒を目指し、手術・化学療法・免疫療法などとの集学的治療による生存率の向上に向けて、放射線生物学、放射線病理学、放射線物理学を含めた、広義の“放射線腫瘍学”の更なる発展が求められている、と考えテーマを設定しました。放射線腫瘍医を中心として、あらゆるメディカルスタッフ、放射線生物学者、放射線物理学等の学際的な専門家がこの学問空間に一同に会して、基礎から臨床へ、臨床から基礎への相互方向の学術的トランスレーションを積極的に試みたいと思います。学会主催に際しては教室員の先生方には特に負担をかけると思いますが、皆の力を集結しさすが群馬大学、と言われるよう、熱い思いで共に取り組んでいきましょう。
最後になりますが、当教室と皆様のますますのご健勝とご活躍を祈念いたしまして、平成27年の私の新年の挨拶と致します。
平成27年元旦
群馬大学大学院医学系研究科腫瘍放射線学分野教授 中野隆史