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2018年

近況報告:岡崎 祥平先生(群馬大学)

レジデント便り

<はじめに>
 皆様こんにちは。医師6年目(入局4年目)の岡崎祥平と申します。今年6月まで埼玉医科大学国際医療センターで勤務していましたが、7月より群馬大学に戻り、現在は頭頸部・肺・血液・皮膚・泌尿器担当チームの一員として診療に携わっています。
 この度、僭越ながら近況報告の機会を頂きました。1年前にも同様に近況報告を執筆させて頂きましたので、今回は少し趣向を変えてこのメールマガジンを読まれている医学生や研修医の先生方に向けて、私が放射線科医になってからどのような経験をしてきたかということを中心に執筆させて頂こうと思います。私自身、学生時代は野球部に所属しており部活に打ち込んでいた平均的(~やや下)な学生でした。そのような私の経験を一例として紹介させて頂きますので、医学生や研修医の皆さんが今後のキャリアを考える上で少しでも参考になれば幸いです。

 

<経歴>
 平成27年に群馬大学腫瘍放射線科学教室に入局しました。切らずに癌を根治させることができる重粒子線治療をはじめとする放射線治療の世界に興味を持ち、研究にも臨床にも一生懸命な先輩の先生方の姿に憧れ入局を決意しました。
 私は初期研修を足利赤十字病院で行い、放射線治療についてはあまり学ぶ機会がありませんでした。入局直後に群馬大学で放射線治療の基礎を学び、その年の途中から群馬大学を離れ埼玉医科大学国際医療センターに異動になりました。埼玉医科大学国際医療センターは放射線治療の患者数が年間約1300~1400人と大学病院としては最多を誇っています。私もそのような環境の中、頭の先からつま先までの全身の癌腫に対して、根治照射から緩和照射まで様々な病態の症例に携わらせていただきました。ただ単に症例をこなしていただけではなく、同門の加藤眞吾教授や野田真永教授に1例1例フィードバックを頂きながら研修を行うことができました。そのお陰で、群馬大学に戻ってきた今、入局時よりも自信を持って診療に臨むことができています。

 私が放射線科に入局してから4年間、臨床業務だけでなく研究や学会発表も多く経験しました。それについても書かせて頂きたいと思います。

 

<研究・学会発表>
 当教室の特徴の一つは中野隆史教授をはじめ医局の先生方が皆、情熱を持って後輩の指導に当たっていることだと考えています。平成27年に群馬大学で勤務していた時に、当時の私の上司である野田真永先生、村田和俊先生、小此木範之先生が熱心に指導してくださり、11月に開催された日本放射線腫瘍学会(日本で一番大きな放射線治療の学会)のポスター発表で優秀教育展示賞を受賞することができました。先生方にご指導頂きながら、入稿ギリギリまで何度も何度もポスターを修正したのを今でも鮮明に覚えています。先生方の熱心なご指導に心から感謝しております。

 埼玉医科大学国際医療センターに異動してからは、加藤眞吾教授や野田真永教授にご指導を頂きながら3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT;CTやMRI画像を確認しながら行う高精度な小線源治療)で治療を行った子宮頸癌の治療成績や局所再発因子などについてデータをまとめました。この結果を日本癌治療学会、日本婦人科腫瘍学会、日本放射線腫瘍学会小線源治療部会、インドで開催されたアジア放射線腫瘍学会(Federation of Asian Organizations for Radiation Oncology: FARO)等で発表を行いました。そのうち日本放射線腫瘍学会小線源治療部会ではシンポジストを務め、FAROでは英語で発表しトラベルグラントを獲得しました。この研究については現在論文執筆中で、年内の投稿を目指して最終調整をしています。
 さらに、埼玉医科大学国際医療センター在籍中に加藤眞吾先生に論文執筆のご指導をいただき、症例報告を行い、今年2月に初めての論文を海外医学誌に掲載することができました。(In vivo 32: 337-343, 2018)

 

<大学院生活と海外研修>
 平成28年より大学院に入学し、今年で3年生になりました。私を含め群馬大学放射線科のシニアレジデントの多くは重粒子線医工学グローバルリーダー養成プログラム(L-PhDプログラム)に入り、有り難いことに大学院生の身分ながら研究費を頂いて日々研究を行っています。

 前述の埼玉医科大学国際医療センターでの研究の他に、放射線治療計画支援ソフトウェア(MIM Maestro©)を用いた子宮頸癌の放射線治療の線量合算に関するテーマを頂き、指導教官の村田和俊先生の元で研究を進めています。物理の知識が必要なテーマで、試行錯誤しながら進めておりますが、今年10月に開催されたL-PhDプログラム国際シンポジウムで発表した際に、ハーバード大学/マサチューセッツ総合病院のKathryn D. Held先生と英語でディスカッションするなど有意義な経験をさせていただきました。その後も中野隆史教授にご指導・ご助言いただきながらさらに研究内容を充実させているところです。

 さらにL-PhDプログラムのカリキュラムの1つにインターンシップがあります。私はオーストリアのウイーン医科大学で2週間の短期研修を行いました。ウイーン医科大学は子宮頸癌の放射線治療、特に3D-IGBTに関して世界をリードする施設の1つで、多くの研究結果がウイーン医科大学から発信されています。私も上述の通り子宮頸癌の放射線治療に関する研究を行っていますので、その知見を広めるために、ウイーン医科大学のObservershipプログラムに応募しました。
 ウイーン医科大学ではMRI画像を用いた3D-IGBTを標準的に行っており、研修期間中その治療計画に携わらせて頂きました。子宮内腔に挿入するアプリケータはウイーン医科大学の物理士の先生が独自に開発したものを使用しており、手技中エコーの画像を見ながら狙った場所に(線源を配置するための)ニードルを穿刺しやすい構造になっていました。子宮頸癌の3D-IGBTの他にも、前立腺癌の小線源治療や乳癌術後の加速乳房部分照射(APBI)なども見学することができました。日本だけでなく海外の放射線治療を学ぶことができ、小線源治療を中心に放射線治療に対する見方が広がったような気がします。私は英語が得意な方ではなく、当初は現地の先生方とうまくコミュニケーションがとれずもどかしい思いをした場面もありましたが、徐々にコミュニケーションにも慣れ、現地の先生方とも仲良くなり、多くの収穫を得ることができたかと思います。

 

<おわりに>
 あまりまとまりのない文章になってしまいましたが、私が放射線科に入局してからの経験を書かせて頂きました。
 このメールマガジンを読まれている医学生や研修医の皆さんは研究や海外での研修・学会発表に興味ありますか? もしありましたら是非一度当科に見学に来て下さい! 学生時代の成績は関係なく、私のような凡人でもやる気さえあれば本当に色々な経験ができるかと思います。放射線科に少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。

平成30年11月 吉日