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放射線科教授 中野隆史
【はじめに】
私は平成12年12月16日付けで群馬大学医学部放射線医学講座教授を拝命することになりました.よろしくお願い申しあげます. 私は群馬大学医学部を昭和54年卒業し,群馬大学大学院に進み,永井輝夫名誉教授と新部英男前教授の下で放射線医学を学びました。 大学院卒業後、昭和58年の7月に千葉の稲毛にあります放射線医学総研究所(以下,放医研)病院部に赴任し、主に放射線治療の臨床研究を行ってきまし た。この度,新部英男教授の後任として母校の放射線医学教室を担当させて頂くことになりましたのはこの上ない光栄であり,その責任の重さを痛感しております.
【研究歴と抱負】
これまで,私が臨床研究として重点を置いてきましたのは子宮癌の放射線治療であり、子宮頸癌の基準治療法の確立に貢献しました。 また、放医研の特殊性として中性子線治療,陽子線治療,重粒子線治療などの粒子線治療の開発研究に深く関わってきました。特に,重粒子線治療の臨床試行は これまで放射線治療では治癒の困難であった悪性黒色腫,骨肉腫などの骨軟部腫瘍,肝臓癌,進行期子宮癌や早期肺癌,前立腺癌などに良好な治療成績が報告さ れています.元来、この対がん10カ年総合戦略は中曽根康弘元総理が押し進めたものであり,群馬県民にその成果を還元する意味におきましても,是非とも群 馬の地に医療専用の重粒子線治療施設を誘致し,機能の温存できる放射線治療を実践したいと希望しております.これと平行してCT、MRI,PETなどの医 学画像を放射線治療計画に応用し,腔内・組織内照射法やRadiosurgery、強度変調照射法(IMRT)など,腫瘍組織にのみ放射線を集中させる革 新的な治療法を開発し,放射線治療の高精度化によるQuality of lifeの良い治療法の確立を目指したいと思います.
一方,基礎研究は腫瘍ごとの放射線感受性の相違のメカニズムについて最近の分子生物学的手法によりcerbB2癌遺伝子やp53,p21,p27などのア ポトーシス関連―細胞周期関連遺伝子を中心に研究を行い、最近,ようやくおぼろげながら腫瘍の放射線感受性の相違の実態がつかめて参りました。そこで,今 後の展開としては遺伝子レベルでの癌の悪性度診断や腫瘍の放射線感受性の予測法を開発したり、分子生物学的手法により腫瘍の放射線感受性の操作を行う,い わば,遺伝子治療併用放射線治療の開発研究を積極的に推進したいと思っています. 申すまでもなく大学病院は使命として新しい医療技術の開発や高度先端医 療の実践が課せられ、一方では地域医療の中枢基幹病院としての機能を持っていま す。そこで地域医療に果たす大学病院の役割を明確化し、関連病院との診療における機能分化を促進して地域社会の医療の要請に応える体制を築きたいと思いま す。その中で地域医療機関と放射線治療セミナーや研究員制度を通して人材交流を促進し、インターネットなどによる遠隔診療カンファレンスシステムなどを整 備して有機的に連携を取り相補的に協力し合い,教室の活性化と診療レベルの向上を図りたいと考えます。  群馬大学医学部の卒業生の多くは最近は群馬に残らないことが大きな問題となっております.色々な原因が考えられておりますが,少なくとも私どもが,魅力 のある教室づくりを心がけることが最も肝要であると責任を自覚しております.また.ご承知のごとく,現代の患者と医者との関係は父権的な信頼関係から、 「説明と同意」に象徴される契約的信頼関係に移行しつつあります。新たな患者―医者関係に基づいた医の倫理の教育をしっかりと行い,患者の人権を尊重し、 患者から信頼される医者を数多く養成したいと考えています。
大学医学部は教育、研究、診療という、どれも極めて重要な業務を負っています。この3つの業務をバランス良く果たすことは容易ではないと思いますが、医の 倫理、教育への情熱、研究に対する強い信念を教室員と醸成し確認し合いながら、やりがいのある充実した毎日を過ごせる教室作りを目指したいと思います.多 くの新入医局員を歓迎いたしますので一緒にすばらしい教室を作りましょう。 よろしくお願い申しあげます.
放射線科教授 中野隆史