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ラボより

"日本の放射線治療をリードして、世界へ!" 私たちは60年間連綿と続く「人の和」を絶やさず、がん放射線治療の向上を目指した研究を続けてきました。基礎と臨床、生物と物理などあらゆる垣根を乗り越えて挑戦を続けます。大学院生を中心とした若い研究室。その活動の一端をご紹介します。

群馬大がもつ重粒子線治療は、優れた抗腫瘍効果をもつ反面、稀少な医療資源です。このため、放射線治療全体のレベルを上げるためには、重粒子線治療のさらなる最適化と、重粒子線治療が最適な症例を同定するためのバイオマーカーの確立を並行して進めることが重要です。私は重粒子線治療の最適化を目指して、超解像蛍光顕微鏡によって取得したDNA損傷の3次元構造と物理シミュレーションしたビームプロファイルの関連を解析しています1。また重粒子線治療に層別化されうる光子線治療抵抗性症例に特徴的な体細胞変異の探索をおこなっています2
1. Oike and Niimi et al. Scientific Reports 2016;6:22275(2017年JASTRO梅垣賞)
2. Yoshimoto et al. Gynecologic Oncology 2020;159:546-553 ほか(2021年JASTRO阿部賞)

放射線治療が免疫反応を誘導することは古くから知られており、最適な免疫反応を確実に誘導できれば、遠隔転移をもつ進行期がんでさえ根治を狙える可能性があります。私は放射線によって誘導されるDNA損傷応答に着目し、そのシグナル経路が免疫チェックポイント阻害剤の標的分子PD-L1の発現を制御するメカニズムを明らかにしました3。現在は、重粒子線治療に特徴的な免疫反応の解明や、免疫活性化に最適な放射線治療法の確立を目指して研究をおこなっています。
3. Sato et al. Nature Communications 2017;8:1751(2018年JASTRO梅垣賞, 2019年JRS優秀論文賞)

がんの中の「低酸素領域」という場所を知っていますか? 低酸素領域にはX線や抗がん剤が効きにくいがん細胞が多く存在すると考えられていることから、同領域は難治性がんの治療ターゲットとして注目を集めています。私は低酸素領域をもつマウス腫瘍を実験的に作製し、放射線により誘導されたDNA損傷と血流や酸素状態との関係を解析しています。今後は低酸素領域での重粒子線治療の効果を可視化し、同治療の個別最適化につなげたいと考えています。

群馬大学が得意とする子宮頸癌に対する放射線治療では、子宮の中から放射線を当てる、腔内照射という技術が治療成功の鍵となります。この技術をより多くの放射線治療医が習得し、全体の技術レベルを底上げすることが重要です。私は実際の子宮頸癌患者さんの腫瘍を3Dモデル化し、それを実装した腔内照射練習用のシミュレーターを開発しました4。今後さらに多彩な形状のモデルを生産し、いずれは国境を越えて本シミュレーターを用いた放射線治療医教育プログラムを提供したいと夢見ています。世界中の子宮頸癌患者さんが一人でも多く助かるよう、前進あるのみです。
4. Tomizawa et al. Journal of Clinical Medicine 2022;11:3103

重粒子線の殺細胞効果は線エネルギー付与(LET)に影響されることが基礎生物実験では確認されています。しかし実際の治療における標的内のLET分布は不均一であり、LETプロファイルが治療成績に与える影響は十分に解明されていません。私は大学院の研究課題として、重粒子線治療計画のLET分布を簡単に可視化するプログラムを開発しました(論文投稿準備中)。このプログラムを使って、重粒子線の治療計画を最適化する鍵を見つけるべく、日々、解析に取り組んでいます。