海外留学記ー吉本由哉先生(カロリンスカ研究所)

皆様、こんにちは。

この4月で医師7年目(入局5年目)になりました、吉本由哉です。昨年8月より海外留学の機会を頂いて、スウェーデン・ストックホルムにあるカロリンスカ研究所に博士研究員として在籍しています。研究所・研究室のことや、近況についてご報告させて頂きます。

カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)はスウェーデンの単科医科大学であり、日本ではカロリンスカ医科大学と呼ばれることもあります。ノーベル医学・生理学賞の選考委員がおかれていることでも有名で、毎年12月にはキャンパス内の講堂で受賞講演が行われます(私も聴きに行ってきました)。研究所の組織は研究所、医学部、病院の3つに別れ、さらに研究所には22のDepartmentがあります。私が在籍しているのはDepartment of Oncology-PathologyのCancer Immune & Gene Therapy研究室です。研究室を主催するRolf Kiessling教授は、免疫学上重要なNK細胞の発見者の一人であり、現在も抗腫瘍免疫研究の業界をリードしています。研究テーマは、pDNAワクチンによる抗腫瘍免疫の活性化、DC療法、NK細胞活性化機構解明、腫瘍細胞の免疫逃避機能解明などを行っています。

私たちのいるのはCancer Center Karolinskaと呼ばれている6階建ての建物で、そのうちの1フロアを、数グループで共有しています。建物全体では30名ほどのPI(Principal Investigator、教授や准教授など研究指導者)がいますが、主な住人は博士学位取得を目指しているPhD studentです。さらに加えて博士研究員(ポスドク)やMaster student、技術員がいます。平均年齢は若く、建物1階のKitchenではハロウィンやイースターのパーティーが開催されたりと、雰囲気も賑やかです。国際色も豊かで、ヨーロッパを中心に世界各国から学生が集まっています。私が一緒に仕事をしているのは主に、スウェーデン人医師、学生、スペイン人ポスドク、ドイツ人学生などで、研究室での共用語は英語です。この建物では日本人は私一人だけですが、病院では数人の日本人が医師として働いているそうです(普段はお話しする機会がないのですが)。また違う研究棟にまで足を伸ばせば、そこそこの数の日本人研究者がいると聞きました。

Rolf Kiessling先生は基礎系研究室の教授ですが、病院・臨床腫瘍科の医師を兼任しています。専門はメラノーマ(北欧では全がん中6位の罹患率と比較的メジャーな疾患)で、その患者検体を用いた研究がグループの主なテーマの一つです。メラノーマでは最新の免疫標的薬剤が他がんに比べていち早く認可されており、研究価値が非常に高いものになっています。今までにIpilimumab投与を受けた患者リンパ球の変化が(具体的には、顆粒球MDSCの減少が)治療効果と関連していることや、DCワクチン投与後に生体内でNK活性が変化することが見出されてきました。最近ではNK感受性分子の重要性(詳細は割愛)を臨床検体から見出していて、この投稿中の論文では私も共著者になっています。一方で研究の進め方では、日本とは違うと感じる部分もあり、最初は随分戸惑いました。なかなか上手く表現出来ないのですが、随分と権限を与えられて任されている(ところもある)といった感じでしょうか。周囲のPhD studentを見ていると、研究室を跨いで勝手に共同研究を始めたりと、自由な印象も持ちます(ここまではOKという絶妙な線引きがあるようです)。私自身もようやく、プロジェクトの進め方が分かって、少しは仕事がはかどるようになったと感じます。この辺りについてもいずれ機会があればお伝えさせて頂きたいと存じます。

このたびは海外での研究の機会を与えて頂き、医会の皆さまには本当に感謝しております。引き続き頑張ってゆきたいと思います。また、皆様からの引き続きのご指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。