新年のご挨拶−中野隆史教授

皆様、明ましておめでとうございます。新年にあたりご挨拶申し上げます。

昨年を振り返ってみますと、重粒子線治療で予定を上回る約1000名のがん患者を大きな問題を起こさずに治療することができました。そして、文科省の「博士課程教育リーディングプログラム:重粒子線医工学グローバルリーダー養成プログラム(平成23~29年度)を担う中心的講座として、重粒子線治療を中心とする領域で世界のリーダーを養成する大学院教育を推進して来ました。また、群馬県と協力し、政府から重粒子線治療を中核とした「がん治療技術地域活性化総合特区」の指定を獲得したり、文部科学省の「国立大学改革プラン」において群馬大学が重粒子線治療の強みを活かしたプログラムで全国の12の大学の1つに選ばれたりと、ますます群馬における重粒子線治療が注目された年であったと言えると思います。更に学会活動では、私が2016年の第54回日本癌治療学会学術集会の大会長に選出されるという出来事がありました。ご承知のごとく、日本癌治療学会は規模、内容ともに国内で最大級の学会であり、日本のがん治療の方向性を決定していくという重要な学会でもあります。このような大会を任されたのも、同門の諸先生方のこれまでの実績が評価されたものであり、群馬大学腫瘍放射線学分野への期待の表れと考えております。そこで、この学術集会に対する私の思いを述べさせて頂き、新年の挨拶に代えさせて頂きます。

近年、がん治療の進歩はめざましく、放射線治療でも、画像誘導放射線治療、IMRT、粒子線治療などの新しい技術が開発されてきました。外科療法においても、内視鏡手術やロボット支援手術に代表される技術革新、QOLを重視した低侵襲手術、機能温存手術が発展しました。薬物療法においても、分子標的薬の開発やオーダーメードの免疫療法の登場により、包括的ながん医療の進歩と裾野の拡大が現実のものとなっています。

この間、日本社会も高度経済成長を基盤とした成長社会から、経済成長の鈍化や少子高齢化の進行などから、社会インフラの整備と人生の質が重視される成熟社会へと移行し、がん医療に対する考え方、さらには人生の価値観にも変化が起きています。がんに対して、医療は何をなすべきか、何を治し、何を癒やすべきか、高負担医療社会を克服し、患者さんの視点のみでなく、文化・文明の視点から新たな良心によるがん医療の論理と日々の秩序を再構築することができるのか、が問われているのではないでしょうか。第54回日本癌治療学会学術大会では、こうした状況を踏まえて、大会のテーマとして「成熟社会における、がん医療のリノベーション」を掲げ、現代のがん医療の着実な成果と近未来の諸課題を、“成熟社会における医療”という側面から再考してみたいと考えています。

がん治療の選択肢が多様化し、患者さん中心の医療が成熟していく中、さらに新たな医療哲学に止揚すべく、放射線科のみならず、様々な分野の方と連携して、多面的にがん医療を科学し、哲学することを通して、“さすが群馬大学”と言われるような学術集会を目指していきたいと思います。教室員の先生方には特に負担をかけると思いますが、今後の日本のがん治療を我々が変える、と言う熱い思いで共に取り組んでいきましょう。シンポジウム等の提案があれば常時受け付けていますので、是非ご一報下さい。

最後になりましたが、当教室と皆様のますますのご健勝とご活躍を祈念いたしまして、平成26年の私の新年の挨拶と致します。

平成26年元旦

群馬大学大学院医学系研究科腫瘍放射線学分野教授  中野隆史