海外留学記ー岡本雅彦先生(オハイオ州立大学)

オハイオ州立大学留学中の岡本です。赴任から早くも2年弱が過ぎまして、2度めの留学記を執筆させていただきます。

研究――
アメリカの大学のラボは入れ替わりが激しいのが特徴ですが、私のラボもそのご多分に漏れずに赴任中にメンバーがだいぶ入れ替わりました。ラボ内はPI (principal investigator :主任研究者)ごとに幾つかのチームに別れているのですが、私のチームは5人中3人が辞め、新たに2人が加入しました。他のチームも適宜入れ替わってお り、またundergraduateの学生さんも短期間で加入したりしているため、名前を覚えるのも一苦労な状態です。気がつけばラボ内でも古株になって おり、試薬の場所や実験器具の操作方法を尋ねられる機会が増えました。私のチームに新規加入した2人は生物実験をするのが初めてということも有り、培養の 方法からウェスタンブロットやPCRなど実験を指導・助言する業務が勤務時間の1/3くらいを占めております。無菌操作を教えるのは一苦労で、インキュ ベーター内の細胞がコンタミにより全滅という悲惨な事態も起こりましたが。
ラボマネージャーも入れ替わりましたが、新しい方は良くも悪くもアメリカ人気質な方で、発注をお願いしたものが発注されてなかったり、物流センターに届い た連絡が来なかったりということが度々あります。実験が滞ることこの上ないのですが、最近では諦めてこまめに発注状況を確認するようにしています。

暮らし――
昨年の冬は暖冬でほとんど雪も降りませんでしたが、今年は通常通り雪も降り、最高気温が氷点下の日が1週間単位で続くような、噂に聞いていたオハイオの冬 でした。雪が降っても幹線道路の除雪はあっという間に行われますし、室内の防寒もしっかりしていますので特に不自由なく北国の冬を堪能しております。私の 借りているメゾネットは全館暖房なのですが、ある日の夜になんとなく寒いなと思ったら暖房システムが故障していました。厚着をして布団を被ってなんとか一 晩を過ごした後、翌日には無事に修理をしていただきましたが、室温が徐々に下がっていく夜は恐ろしく、文字通り肝を冷やした事件でした。

医療――
昨年は妻の妊娠・出産のためにアメリカの医療を受ける機会がありました。私は現在オハイオ州立大学の正規職員という立場であるために、オハイオ州立大学が スポンサードしている医療保険に加入することができています。周知の通り、アメリカでは自由に医療機関を受診することが出来ず、保険会社が契約している医 療機関(ネットワーク医療機関と言います)の中から選んで受診する必要があります。医療保険の種類によっては、どんな疾患でもまずはホームドクターに受診 し、そこからの紹介がないと専門医にはかかれないというものもあるようです。オハイオ州立大の保険は、月々の掛け金、受診する際の自己負担率、自己負担金 の上限、非ネットワーク医療機関の受診の可否などによって全6種類の医療保険の中から保険を選ぶ必要があり、非常に複雑でした。掛け金は月々100ド ル?500ドルとカバー内容によって幅があります。自己負担率も医療の内容により0%?30%とまちまちです。
医療としては妊娠期間中のエコーは基本2回まで、採血も必要最低限のみなどコスト削減が徹底化しておりました。しかし医師が必要と認めれば適宜保険内での 検査も追加できるようであり、日本の医療に比べると若干寂しい気はしましたが、合理的な印象です。医師が許可した検査結果や次回予約などの内容をインター ネットを通じて閲覧できるサービスもあり、これは非常に便利でした。同サービスからは医師にメールで質問する機能もあり、試しに質問してみたところそれほ ど日を置くことなく返信がありました。医師の業務量の増加が心配されますが、おそらく専任のスタッフがある程度処理しているのではないかと想像します。

Time has wings――
光陰矢のごとしの諺のように、留学の日々もあっという間に過ぎてしまいました。2年弱基礎研究に没頭して、本当の意味での基礎研究の難しさ、楽しさを学べ たような気がします。思うように結果が出ないもどかしい日々も続き、自分の立てた仮説を否定される辛さを味わうたびに、自然科学というものはこのように ゆっくりと少しずつ進んできたのだなということを改めて実感しております。 雪深い厳しい冬がようやく過ぎ、春の足音が少しずつ聞こえてきたところで、4月からは群馬大学に復職させていただきます。この貴重な経験を少しでも皆様に お還しできるよう、努力させていただきます。