海外留学記ー岡本雅彦先生(オハイオ州立大学)

平成15年卒の岡本雅彦です。 本年5月までは群馬県立がんセンターに勤務しておりましたが、6月から米国オハイオ州コロンバス市にありますThe Ohio State Universityに研究留学させていただいております。留学からはやくも半年が過ぎ、当地は冬の足音が聞こえてきました。現状について簡単ですが報告 致します。

オハイオ ―― じゃがいも?
じゃがいもで有名なアイダホ州と語感が似ていますが、オハイオ州はアメリカのわりと北東の方にあります。五大湖の右下あたり、と言うと伝わりやすいでしょ うか。時間帯は東部時間なのですが、地域区分としては中西部に入ります。また、じゃがいもではなくトウモロコシが名産のようです。
コロンバス市はオハイオ州の州都で、人口は79万人と全米第15位の都市です。人口密度は1400人/km2とボストンの1/4程度で、アメリカのいわゆ る地方都市のイメージの街です。ちなみに群馬大学のある前橋市の人口密度は1100人/km2ですが、似たような雰囲気を感じます。家の周りには自然が多 く、アパートの庭で夏にはホタルが舞いますし、周りを散歩するとリスやウサギと出会います。またゴルフの帝王ジャックニクラウスはコロンバス市の出身であ り、市を取り囲むように走る高速道路はJack Nicklaus freewayと呼ばれているようです(実際に聞いたことはありません)。市周囲にはゴルフ場も多く、私の家の裏手もゴルフの練習場となっています。練習 場には当然ネットなどはなく、駄々広い芝生の向こうのほうでガチョウたちがボールも気にせずくつろいでいたりします。

The Ohio State University ―― Go Bucks!
OSUと略します。1870年に開校した州立の総合大学で、コロンバス市のほぼ中心に位置します。全米1,2位を争う学生数を誇るマンモス校です。敷地も 広大で、大学附属の施設としてuniversity airportまであるのには驚きました。先日発表されたTimes Higher EducationのUniversity World Rankings 2011-2012では57位と意外と健闘しています。昨年は66位でしたので、勢いのある大学と言えそうです。コロンバス市にはいわゆるアメリカ4大メ ジャースポーツはホッケーチームしかなく、その代わりとしてOSUのアメリカンフットボールチームが地域住民からとても愛されています。試合の時には10 万人収容できる大学のフットボールスタジアムがチームカラーの赤で埋め尽くされます。スーパーに行ってもOSUグッズ売り場が必ずあり、秋になると試合の 日以外にも街中でOSUのロゴのシャツやグッズを着用している人を老若男女問わず多数見かけます。チーム名がBuckeyesなので、応援の合言葉はGo Bucks! この一言でコロンバスでは暮らしていけます。

Medical Center & Cancer hospital
大学病院としてのMedical Center Hospitalのベッド数は1000床ほどで、その隣に私が所属するDepartment of Radiation OncologyがあるJames Cancer hospitalがあります。放射線治療部はChakravarti教授を含め医者9人、シニアレジテント6人と極端に多いわけではありませんが、医師に はそれぞれ担当Office Associateがついているのが興味深いところです。毎週放射線科内メーリングリストでドクターの予定が送られてきますが、Clinic Day, Academic Dayがきっちりと分かれているのはさすがと思いました。放射線治療患者は一日140人ほどで、例えば今週で言うと新患27人中17人がIMRT,1人が SRTと治療患者の大半を高精度治療患者が占めます。
基礎研究グループには4人のAssistant Professorと私を含めて15人のPost Doc/Research Assistantが所属しています。研究者数の増加に伴い研究室が2ビル3フロアにまたがっており、普段は全然顔を合わせない同僚もいます。
基礎研究としては教授の専門でもある脳腫瘍、特にGlioblastomaをテーマにしている研究者が多いのですが、様々な方面から研究が行われているため、lab meetingでの発表がとても勉強になり刺激となります。自分の発表は毎回冷や汗ものですが。

半年が過ぎて――
情報化と物流が発達した時代ですので、先進国に居住している限り大抵のものは手に入りますし、電子書籍で日本の雑誌や書籍も閲覧できます。時差はあります が日本にいる家族や友人とテレビ電話で話すこともできます。いい時代に生きていることを感謝すると同時に、住むところはそれほど重要ではないのだな、とい うことを実感しています。では留学の価値はどこにあるのか。その一つとして視点の転換があるのかな、と感じています。日本国内で臨床医をしているのとは全 く異なった生活スタイルと環境。周囲の人達の多様な背景に由る思考や判断基準。こういった物事に触れることで、異なった価値観に基づく新たな視点が獲得で きつつあるように思います。
医師不足が叫ばれる中、このような貴重な機会を与えていただいた中野教授、鈴木准教授を初めとした医会の諸先生方、前任の野田先生、白井先生にこの場を借りまして心から感謝申し上げます。
これから到来するオハイオの冬は、とても厳しいと聞いています。この厳しい季節を乗り越えて、帰国の際にはより成長した姿でこの留学を皆様にお還しできるよう、日々努力したく思っております。